第21話 初デート

 そして文化祭から見て明後日、今日は振替で月曜日だけど学校がない。文化祭の日にデートの約束っぽいのをしてからわずかなのに、今日いきなりデートの日ときた。そんなわけで朝早くから電車に乗ってバスに乗って1時間ほど。着いたのはちょっと遠いけど、普段行くところよりよっぽど大きいショッピングモール。

普段行くような場所と違って、そもそも横にとても大きい。あまりそういうところに行かないからそんな感想しか出てこない。

 今日は、冬の洋服とかを見に行くんだって。そんなわけで入った一店舗目。先に言っておくと、地獄の始まりだった。山のようにあるお店をはしごして、好みの服がないか探すんだけど、さらに一店舗一店舗が大きかったり遠かったり。それでいざお店に入ったと思ったらいろいろ見比べて、どっちが似合う?って言われて。正直どっちがいいとか全然わからないので、毎回悩むし、そのたびに

「もー、ちゃんと見て!」

 って言われる始末。前世がオタク男子な自分にはあまりにも高すぎる壁、明るすぎる後光、まるで神様に見えた。


 そんなこんなで、お昼をイタリアンなお店で食べてるんだけど、すでにくたくただ。

「疲れた~」

「でもまだ全然買ってないし、これからあなたの服も見に行くんだけど?」

「え~、女子高生大変すぎでしょ~」

「あなたも女子高生なんだけど...」

「そうだけどそうじゃなくて~!」

 そんないつもと変わらない会話。でも二人だとちょっとニュアンスが違う気がして、それはそれでちょっと楽しい。思わず彼女の顔をじっくり見ちゃって、それで気づいた。

「もしかして、今日ちょっとメイクしてる?」

「え、今気づいたの?」

 うっ。メイクもわからないおっさんで悪かったですね。ちょっと不貞腐れる。

「いやいや、そういうことじゃなくて。気づいてくれてうれしいなー、って」

 メイクをしていなくてもかわいいのに。そう言いたいけど、実際メイクした姿もかわいいので、蛇足だと思ってやめた。


 そして、午後も服を見にいろいろなお店を回って。普段かわいい私服に乏しい私のためにいろいろ選んでくれたのはうれしいけど。

 そういえば、そうだよねぇ...。今は試着室の中。すっかり忘れてたけど、自分が服を脱いだ姿が見えるわけで、あまりいい気分にはならない。試着室の鏡がなくなってほしいなんて思ったのは、きっと私が世界で初めてだ。

 そんなわけで、長袖の白ブラウス+茶色ベースなワンピース。今日は比較的涼しい日だったから暑くなかったし、小春さんは褒めてくれたけど。だんだんと自分がわからなくなってきたような、消えていくような気がして、鳥肌が立った気がする。これから私はどんどん女の子になっていくのかな?それともこのまま?

因みにワンピースは気に入ったのでそのまま着て帰ることにした。私から見てもかわいかったからね。


そして大体服を買い終えて、クレープを食べている。

「ん、一口あげるよ?」

「やったー!じゃあ私のも一口どうぞ」

 私はシンプルなチョコと生クリームのやつで、小春さんはアーモンドとかキャラメルソースとかいろいろのってるやつ。うん、おいしい。

「こういうのってカップルっぽいよね~」

 なんて言葉にちょっと意識しちゃって。私たち、そう見えてるのかな?思わず周りを見渡して。平日の夕方だからあまりそういう人はいない。それにちょっと安心して。

 そんな慌てふためいた様子を見て彼女は微笑んでいた。


 帰りのバスでも今日はいろいろ話して。といっても大抵は学校の話とかで、思ってもないような話はなかったけど。もうちょっと服の知識とかつけなきゃなぁって思いつつ、さっきのことを思い出して悩んで。小春さんも何か悩んでるような顔を見せて、楽しい日だったけどちょっと不穏さが残る一日だった。

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