第11話 修学旅行と恋2

 結局昨日はあまり寝れなかった修学旅行2日目。今日は改めて京都に向かって、準備の時に決めたルートをいろいろ周る日だ。今の気持ちはとてもそれどころじゃないけど、それで好きな人に心配かけてもだめだし、関係ない人に心配かけるのはもっとだめだから、頑張って平常心に戻す。


 とりあえず、一番近い伏見稲荷から行くことにした。願い事が通ったお礼の意味で鳥居が奉納されて、1万近い数があるみたい。話では聞いていても、実際に見るとやっぱり圧巻だ。

 次に清水寺。清水の舞台から飛び降りるなんて言葉があるけど、とても高い。

 そして下鴨神社。会野さんがおやつを食べたいからと選んだ場所だ。縁結びの神様と聞いて目がそっちを向いちゃう。いけないいけない、これは修学旅行だもん。

 あと金閣寺。思ったより光ってない...?そんなギャップも面白かったし、やっぱり金ってすごい綺麗だなって。

 最後に北野天満宮。高月さんのアイデアだった場所だ。とても有名な学問の神様がいる場所。もしかして難しいところ受験するのかな?頭いいし。

 それより、こうしてみると思ったより何も考えてない感想ばかりだな、こんなんで発表とかできるのかな...心配だよぉ。


 もちろんお昼も済ませて、ほかにも細々といろいろなところを見て周って。あっという間に二日目夜。やっぱり楽しい時間ってあっという間、いつもそう思う。前世では楽しかったようで意外と空しいことも多かったのかななんてまた暗いことを考えかけちゃう。いけないいけない。

 今夜はみんなそこそこ元気みたいで、布団に入ってもすぐには寝ないで話をするみたい。

「でさ~、知花ちゃんは誰が好きなの~?」

 よりにもよって恋バナだ。まぁJKが話すことだから想像してないほうがおかしいけど、今の私には好きな相手がいて、でも同性で、でも前世の男の時の心が多少あって、つまり異性で...?わからないよー!頭がパンクしてあっという間にへなへな~って感じ。

「つまりいるってことなんだ?」

「え!?だれだれ!?」

 やっぱりこうなる。とはいえ軽率にいうこともできないし。

「えー、ないしょだよー」

 棒読みの演技しかできない。どうして自分。

「ずいぶん怪しいね~。さては...」

 大好きな人にだけはばれちゃいけない、そう思った時。

 先生の足音が聞こえた。みんな一斉に寝てるふりに戻ってやり過ごす。

 みんな興奮してたみたいだけど、案外寝てしまったらあっという間で。でも、私はやっぱり寝れなくて。小声で

「だれか起きてる?」

 って、寝てるふりのまま呟いてみた。そしたら、

「起きてるよ。」

 大好きな人が、起きてて。二人きりで。恥ずかしいけど、うれしくて。うれしいけど、ちょっと怖くて。怖いけど、やっぱりちょっとうれしくて。じれったい。

「それにしても、君の好きな人、いったい誰だったんだろうなぁ。」

 そうつぶやいている。早く言ってしまいたい。でも言ってしまったら...失敗したらなんて考えたくもない。今あなたがいなくなったら、きっと私は壊れちゃう。

 そしてずっと言葉を探していると。

「いつかきっと聞かせてね、知花の好きな人。」

 すでに恋に落ちているのに、さらに好きになる。好きって限界がないみたいだ。さらに嬉しくなる。自分の気持ちに収拾がつかない。

「私の好きな人も、知りたい?」

 うっ。聞きたいような、聞きたくないような...。でも、知りたいし、でも、知りたくないし。むずむずしてると。

「私の好きな人はね...?」

 待って、やっぱり心の準備が、今じゃなくて、えっと、その。

「ストーップ!」

 思わず大きい声で叫んじゃう。時刻は夜の23時。小春さんが少し笑う。そして少しして開くドア。いまにも怒りそうな担任。無事怒られてしまった。でも怒られた後ちらっと見えた寝顔も、私にとっては最高のご褒美だった。


 また寝不足のまま、3日目、ついに帰宅する日。二人は寝てたし、小春さんは何もなかったみたいに過ごしてるしで、私だけ緊張してる。帰りの新幹線でもう一度寝たら、少ししてカメラの音が2回くらい聞こえた気がした。でも、今はこの幸せな気持ちのままで、夢が見たい。そう思える、とても素敵な修学旅行だったなって胸を張って言えると思う。


 ◇


今、私たちは他愛もないことを布団の中で話している。例えば、杏奈が撮った知花っちのおしゃれした写真を見て。今日周ったところの写真を見て。そして、ちらちら私が心配してた知花のことを考えて。

「あれは、絶対恋をしてる乙女だと思う。」

「だよね~。あのグループメンバーだったら基本誰にもばれないだろうけど...」

「それでも相手が気になるね~」

JKなんて、恋バナの申し子とでもいうような存在だ。そんな私たちが変化に気付かないわけがない。でも、問題は相手がだれかだ。絶対とんでもないことになる。JKの勘がそう囁いたけど。やっぱり相手はみんなで駄弁っててもわからなかったので、そのまま今夜は寝ることになった。


次の日、新幹線で寝ている知花の顔は幸せそうだったので、とりあえず安心して。

かわいかったから、こっそり写真を撮った。ばれたら怒られそうだけど。

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