第24話 勉強会と見せかけて
「あのさ、今日一緒に勉強しない?」
「夕依ちゃん家で?」
今日は珍しく彼女が積極的な金曜日。今までこんなことなかったから新鮮。
とはいえ、好きな人を家に上げるのってそんなハードル低いものだったっけ。私の場合は向こうから来ちゃったわけだけど。
「珍しいね、急に。どうしたの?」
「いや、なんとなく...?」
怪しい。とはいえショッピングモールに行ってからもうひと月くらい経つし、そんなものかな。と思って家に来たんだけど。
正直、すごい緊張してる。だって前に私の家に来た時、あんな状態とはいえすっごく緊張したし。当時は今と関係、全然違かったんだよね。そのあといろいろあって。こうしてみると感慨深いっていうか、とても長い時間だったみたいっていうか。
あ、呼ばれたから行かなきゃ。また私の世界に入ってたような気がする。
「お邪魔します」
「とはいっても親は今日いないから、あまり気にしなくてもいいよ」
「それ、変なこと考えてる時のやつじゃん」
「そ、そ、そんなことないからね!?」
え、図星なの?それはそれで心配かもしれない。普通に勉強会だよね...?
まぁ、もちろん何か起きたわけでもなく。黙々と勉強会中。今までよりも勉強に熱が入っている分、疲れるけどわかった分だけ楽しい。少し疲れたなーって思ったら、ずっと私のことを気にしてたのか
「いったん休憩する?」
って。ありがたいから言葉に甘えようかな。私は紅茶をお願いする。
はいはーい、なんて言って小春さんは部屋を出た。
それにしても、女子の部屋ってこんな感じなんだなって。シンプルな時計とか、淡いピンクなカーテンとか、この小さめの机だって、細かいところに女子力がある気がして。私の部屋はぬいぐるみとか置いてあるとはいえこんなにかわいくない気がする。
あ、ベッドのそばに写真が。ってこれ、私が修学旅行始めに浮かれてきたときのやつじゃん!?!?!なんで持ってるの!!?!?そして思わず手を伸ばそうとしたとき、小春さんが戻ってきて。あ。
向こうもこの写真があることをすっかり忘れてたような顔で、急に慌てふためく。ちゃんと飲み物とかは机に置いてからだったけど、えっと、その、なんて向こうも会話がぎこちない。
「実は、あの時ちらっと見てて...」
うっ。じゃあ、顛末まで見られてるってことじゃん。それはなおさら恥ずかしいんだけど。
「だからさ、髪結っても、いいかな?」
「しょうがないなぁ」
一人っ子だし、この性格もあってか基本的に自分で結ぶことが多かったので、人にやってもらうのは少しこそばゆい。でも、人がやると、たぶん私よりいろいろ知ってそうだから、それはそれで面白い。
そんなわけで、三つ編みに。本当はハーフアップみたいにしたかったみたいだけど、あまり髪長くないから足りなかったみたい。ヘアピンで留めただけ。
鏡を見たら、まるで自分じゃないみたい。普段と違う自分に心が躍る。そういえば、何か忘れてるような...?
その忘れていたことを思い出して、紅茶とチーズケーキを戴く。このチーズケーキ、小春さんが作ったんだって。
「だって、誕生日でしょ?明日」
あっ。いろいろあってすっかり忘れてたかも。とはいえ、誰かに話したりしたことあったっけ?
「ほら、入学式のちょっと後、自己紹介シートみたいなの書いたでしょ?」
そういえばそんなこともあったなぁ。とはいえよく覚えてたもんだと、正直びっくりしている。
「とはいっても実は夕依の誕生日覚えてないんだけどね...」
「ひどーい!12月24日、クリスマスイブだよ!」
「ちゃんと覚えとくね。」
心の手帳にメモして、改めてケーキを一口。すっごいおいしい。思わず顔がほころんだ。
誕生日を親族以外から祝ってもらうこともなんやかんや珍しいかも。普段どれだけ一人だったのさ、って話だけど。
プレゼントには香水をもらいました。とはいえ、普段使わないのと初めてのプレゼントで使いにくいなぁって。
他の人からもメッセージをもらって、また初めてが増えていく。そんな誕生日もあっという間に過ぎていった。
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