第30話 バレンタイン・クライシス
冬休みが終わり、もう2月上旬。つまり、バレンタインシーズンだ。男子がそわそわしているのは、こっちの目線で見るとちょっと面白い。まぁ当時ももらえたことがあるわけじゃないんだけどさ!
そんなわけで私たちも友チョコの話とかになって、私も作ることにしたわけ。
まず、バレンタインでどんなのを作ればいいんだろ。調べてみるか。
そしたらクッキーとか、トリュフチョコとか、時にはケーキも出てきて。みんな気合入ってるなぁ、なんて思う。普段料理をしないだけなんだろうけど。難しくなさそうなやつ...よくわからないから、クッキーにした。
「えーと、みんなに合計で5つ、あと会野さんと...」
大体必要な分量をイメージしつつ、買い物に来た。普段あまりココアパウダーとか使わないから、家にないし。あとついでに夜ごはんの買い物も任されちゃったし。
そんなわけで小麦粉とかが置いてあるコーナーを見てると、見知った姿が。
「やっほー」
「あ、知花ちゃんか。やっほ~」
「なんか久しぶりな気がするね、会野さん」
「そうだね~、普段ほとんど寝てるし~」
「今日はどうしたの?」
「夜食とかそういうののためにね、買いに来たの」
確かに、コンビニとかで買うより安いもんね。
「とはいえ、そんなんじゃ健康に悪いよ~?」
「うん、気を付ける~」
...たぶん、変わらないな。これは経験則。私はこうならないように気を付けないと...
そのままほかの買い物も済ませて、帰宅。クッキーは夜ごはんの後に作ることにした。
あまり普段料理とかしないからか、三角巾にエプロン、マスクという重装備をして準備完了。まずバターを常温で柔らかくして、砂糖と混ぜる。で卵と薄力粉とかを入れてまた混ぜて、オーブンを予熱して...普段やらないとやっぱり忙しいし力がいるし大変だ。お母さんってすごいんだなぁ。
型抜きが終わってオーブンに入れたころには8時から始めて10時、思ったより時間がかかってピンチ。ラッピングの準備しないと。
そんなこんなで寝るころには11時になってた。いつもより寝るの遅くなりそう。
「おはよ~、そういえばバレンタインのどうぞ」
「ありがとー、それにしても知花っち寝不足?」
「うん、昨日作ったら思ったより時間かかっちゃってさ」
バレンタイン当日。普段は来るのが遅い人も早く来て交換してる。なんでかっていうと、一応校則ではこういうの持ってくるの禁止だから。でも、先生が来る前だと黙認されている...らしい。
そんなこんなで渡したい人に渡し終えて、ほかの人からも何個かもらったから作らなきゃなぁ、とか考えて、小春さんを待ってたけど。
「今日、遅いなぁ...」
まさか、小春さんがそんなバレンタインのルールを知らないとも思えないし、寝坊とかするような人でもないし。結局、チャイムぎりぎりで来たので、朝に渡すことはできなかった。
一限が終わった後、おはようって挨拶をしたけど、どこかよそよそしくて、変な気分だった。そのまま会話を続けられなくて、席に戻る。
私、何かしちゃったかなぁ。そのまま二限で考え続けて、結局答えは出なかった。
そのあとも小春さんはよそよそしいまま、放課後。真っ先に帰ろうとする小春さんを外で引き留めて。
「何かあった?様子変だよ?私、何かしちゃったかな?」
「しばらく、一人にさせてくれないかな。」
聞いたことない声色、魂が抜けているかのような表情。私はそのまま、何も答えることができず立ち竦んでいた。
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