第7話 体育祭と団結
あっという間に体育祭の当日になった。前日に緊張して寝れないとか、そんなことは全くなかった。でも家族とかがいっぱいいるのを見たら、かなり緊張してきちゃった。
まずは準備運動。といっても普通にラジオ体操をするだけなんだけど。今日一日けががないように祈りながら、しっかり体を伸ばす。
まず最初に走るのは柊さんと小春さん。400m走だ。
がんばれー!クラス全体の応援に熱が入る。二人とも元々クラスの人気者なのも相まってなおさらだ。
やっぱりすごい速い。風を切って、ってこんな感じなんだろうか。あっという間に二人とも先頭でゴールを切る。
本当はお疲れ~!って駆け寄りたいところだけど、100m走は次で、ましてや人が多いからすぐに集合時間になってしまった。しょうがないので、集合場所に向かう。
私含めた4人がスタート位置について、クラウチングスタートの姿勢をとる。私は一番内側だ。ちょっとだけ嬉しい。
スタートの音が鳴る。みんな一斉に走り出す。もちろん私も。みんな速いなぁ。なんて思ってる余裕もないくらい必死で走った。風が気持ちよかった。
3位だったけど、頑張って走りきった。もう走れない気すらしてくる。この後まだたくさん競技があるってのに。自分の席まで戻ったら、柊さんと先に走ってた星乃さんがお疲れーって褒めてくれた。
そして障害物競走。海野さんと高月さんが出ている。
障害物競走は、具体的には大きい袋に入ってジャンプしながら進んだり、ハードルを飛び越したりくくったり、網の中を這って進んだり、よくよく考えるとハードな競技だ。でも海野さんが小さい体であっという間に網を抜けていたのが衝撃的だった。
「いや~疲れた~」
「まだお昼だけどね」
「知花っちいつも疲れた~って言ってる気がするけど...?」
待ち望んていたお昼ごはんだ。今日は家族が見に来ている日ではあるが、お弁当は生徒だけで集まってだ。正直友達の親がいたら緊張で食事どころではなさそうなのでそこはよかったと思う。あとで挨拶しなきゃいけない気がするけど。
「それより、午後はリレーだよぉ~」
「学年対抗の競技もあるし...」
気分が浮き沈みして変な気持ちだ。こんな状況で競技するの???
渋い顔をしても時間は過ぎていく。残り時間が短いことに気付いてしまったので急いでご飯を食べた。むしろ運動前によくない気がする。
午後一番は応援団の応援合戦。みんな精力的に大声を出してクラスメイトを応援する。午後一番でこんなに元気なのを見ると、みんな若いなぁって思う。同い年なはずなのに。たぶん気持ちはとっくにおっさんになっちゃったんだと、今更気づいた。直せるかは別問題として。
今の順位としてはA組が一番優位で、私たちB組は2位。頑張って追いかけている状況だ。だから、なおさら熱が入ってるのかも。
そして一番の問題、学年種目、つまりムカデ競争。準備は毎回やってても大変だなぁって思う。だって身動き取りにくいし。でもこれで最後だと思うと、不思議と寂しさもある。
「頑張るぞー!」
「おー!!!」
ほとんどリーダーしてる柊さんの掛け声にクラスが一つになった。それとほぼ同時、スタートの音が鳴る。
「せーの、いっちに!いっちに!」
みんなでリズムと歩幅を合わせて、頑張って進む。スピード的には、隣のA組が一歩優勢みたいだ。思わずこっちもテンポを上げようとする。しかし。
ここで止まってしまった。理由はシンプルに転んでしまったから。また空気が悪くなることを恐れる。でも、そんなことはなかった。
「だいじょうぶだいじょうぶ!!」
「まだまだ巻き返せるよ!!!」
クラスメイトはみんな明るかった。絶対そんなことはないけど、柊さんがグッジョブってサインをしていそうだ。どや顔で。
結局A組には勝てず2位だったけど、今までで一番団結してた。体育祭、むしろ運動がもっと好きになった気がする。体育祭の意味がちょっと分かった気がする、なんて言ったらおっさんっぽすぎるかな。
そして最後の種目、全員で走るリレー。これで勝つか負けるかで最終結果が変わるだろうから、なおさら本気になる。(点数はもう隠れてるからわからないけど。)
そして始まったリレー。最初に走るのはクラスで1番足の速い男子。先にリードを広げて、それをキープする作戦だ。ほかの組は最後に足の速い人を合わせる作戦らしい。
作戦がうまくはまって、圧倒的なリードをつけて走る。でも後半になって足の速い人が出てくると、一気に差が縮まる。そしてアンカー。ここまで来たら、もう全力で応援するしかない。
「紬ちゃんー!!!がんばれー!!!!」
私も思わず全力で、名前を読んで応援してしまう。
そしてゴールテープが切られた。
結果としては、A組に僅差で負けて2位になってしまった。
最終結果も2位。だけど、悔いは全くない。みんなも、疲れたーとか言いつついい笑顔をしていた。
「お疲れー」
「ほんとだよ~」
「フフッ」
「どうしたの?」
「いや、知花っちいい笑顔してるなって。」
「そっちこそ。」
「えへへ。あ、そういえばさ。知花っちオフ会行く?」
「え...まだ続きがあるの...?」
女子高生はやっぱり若いなと思った。
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