第27話 クリスマス、お泊り

 そしてそこそこ歩いて、二度目の彼女の家。何度来ても緊張しちゃう。それよりも、親に小春さんちのほうが圧倒的に近いなんて嘘をついちゃったのは、ちょっと申し訳ないかも。普段なら歩いて15分もしない距離だし。

 とりあえず軽く雪とかを外で落としてきてから、家に入る。誰もいないときの独特の寒さがあったけど、大好きな人が隣にいるからあまり気にならない。

 夜ごはんっぽい感じのはカラオケで食べて、もう十分だからあとは寝るだ...け...お風呂。そういえば、それをすっかり忘れてたんだけど!?

 先にお風呂に入らせてもらっちゃって、申し訳ないなぁ。それに、寝間着も借りちゃったし...寝間着を借りちゃったし!!!?!!!

 そのあとお風呂に入った小春さんを見送った後、こっそり匂いを嗅いで。いいにおいがするし、落ち着く。なんか不審者みたいですぐにやめたけど。

 そしてお風呂から出てきた小春さん。私とお揃いの、うさ耳のついてるフードのついたもこもこなやつ。まぁお揃いなのは借りてるから当たり前なんだけど。

 そして思ったより疲れちゃったからか、あっという間にベッドへ。とはいえ、二人でベッドに入ってるから、やっぱり落ち着かない。怖さなのか何かわからないけど、思わずフードをかぶって、笑って見せた。そしたらにっこり笑って、そのまま寝ちゃったみたい。私は、その寝顔を見てたらずっと眠れなくって、寝れたのは2時間後くらいだった。


 そして翌朝。スマホを見たらすでに朝の9時ぐらいみたい。終業式の後なのもあって特にまずいとは思わなかったけど、ふと目に入るのは知らない天井。そして我に戻る。そうだ、ここは小春さんの家で、一緒の布団で寝て...!!!

 あっという間に目が覚めて、横に彼女がいないことに気付く。急いで下に降りると、すでに着替えてエプロンをした彼女が、ご飯そろそろできるよー、って。

 私、旦那さんになったのかな????存在しない夫婦生活の記憶が幸せすぎて、思わず涙が出ちゃって、そしたら。

「もー、何してるの、知花。」

 ちゅっ。唇同士のキス。急にどうしたの!?!?!?!!思わず理解が追い付かなくて。




 そのまま目が覚めた。夢だったみたいだ。ちょっと残念だけど、心の準備ができてないし。なんていうか、その。夢からはもう冷めているのに、ずっと夢のことがループして、緊張が止まらない。時計はもう6時くらい。少し早起きしたかな、って横を見たら、小春さんはもう起きてるみたい。普段も早起きなんだなぁ、って新しい発見一つ。心にメモする。

 少し周りを見渡したら、机で一人、本を読んでいる。体育座りのその姿勢がまた綺麗で、見とれてしまう。あ、おはよ。私に気付いたみたいで挨拶してくれる。また嬉しくなって、私も挨拶を返した。

 そのあとは小春さんが朝ご飯を作ってくれた。私も手伝うよって言ったけど、お客さんだしいいよって遠慮がちだったので、あまり押し通せなかった。食パンとスクランブルエッグは、今まで食べた中で最も幸せの味がした。


 しばらくしてだいぶ電車とかも何とかなったみたいだし、帰ることに。少し寂しそうにしてたけど、泊まり続けるのもいけないししょうがない。あ、そうだ。誕生日プレゼントを渡さないと。

「昨日渡しそびれちゃったけど。お誕生日おめでとう、夕依。」

 そうして渡したのは、白い手袋。手編みしたかったけど、あまりにうまくいかなかったので悲しいけど既製品だ。

「うん、ずっと大事にする。ありがとね」

 いつもよりちょっと暗い気がして、もやっとする。さっきの小説の話が重かったのかな?

「あのさ、知花。キスしていい?」

「...うん。」

 そして玄関で、私たちは初めてのをした。あと何回キスできるかを、今は考えることもないまま。

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