第4話 本と優等生
今日はたまたま空いていた図書室で本を読んでみることにした。特に読む本が決まってたわけでもないので、たまたまいた高月さんにおすすめな本を聞いて、それを読んでみることにした。
探偵物の、ライトノベルに近い形式のやつ。本当に本に詳しい人は相手に合わせていろいろ選べるんだな、とちょっと感心した。
そして黙々と読み始める。ありそうで他の作品にはなかった設定、興味をそそられるキャラクター。とっても面白い。そのまま2時間ほど読み続け、1冊300ページくらいあったのに読み終わってしまった。
気づけば夕方6時前。さすがに暗いので、急いで帰らなくちゃ。そう思って急いで図書室を出た時、
「あれ、同じクラスの日向さん?」
「え、えと...」
声のした方に振り返ると、そこにはクラス1の美少女とか言われていた小春 夕依さんが立っていた。
「こんな私に何の用が...?」
ふと気になったことが真っ先に口に出た。
「いや、ただかなり遅い時間にたまたま図書室から出てきたのがあなただっただけよ。」
「そ、そうなんだ...」
特に怒られたりするわけでもなかった安心感と、思ったより大したことない(そんなこと言ったら怒られそうだけど)理由だったことよって気が抜けてしまった。
まだ学校内だし、どうやら小春さんも帰るみたいなので並んで帰ることになった。実際に近くで見ると数倍綺麗でかわいい。男子だったら確実に惚れているだろう。いや内面男子だけど。でも外見は女子で...?
なんでくだらないことを考えてたら、あっという間に校門。この後は一人かぁと思ってたら、帰り道は途中まで同じ方向だったので、そのまま並んで帰ることに。
「そういえば、図書室で何を読んでたの?」
話しづらい雰囲気だったので、向こうから話し始めてくれてちょっと助かる。
「えっと、これこれを...」
とりあえずシリーズ名を答えた。
「面白いよね、それ」
ちょっと声色が元気に、ちょっと声が大きくなった気がする。好意的な反応が返ってくると、ちょっとうれしくなって、さらに自分もスイッチが入ってしまった。
「主人公のこういう個性って何気に新しいし、それを生かしたキャラクターの動かし方とかがすごい面白いなって」
「そうそう、それに主人公の隣にいる○○、そのキャラの能力があってさらに主人公が生きているというか」
気づいたら道が分かれるところ。ずっと話してたような、あまりに短かったような。
でもまさか。こんなに会話が続くなんて。
「フフッ、日向さん、楽しかったよ。また話しましょ。」
独特なオーラをまとったような声で小春さんが言った。
「ぜひ!」
まるで後輩みたいな感じだけど、元気に答えた。
あっという間に、小春さんと仲良くなってしまった。ちょっと前には優等生だなんだでちょっと嫉妬してたのに、話してみたら気さくでとても周りが見えてて、さすが優等生というか...優等生マジック?わからないけど。でも、とても楽しかった。
「もしかして小春さんって私みたいにオタク...?」
小声で言う。とても本人の前では言えないな、とこっそり笑う。
後日、小春さんにあいさつをされて、普通に返事したら周りからあれこれ言われたのは、また別の話。
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