第40話 『ステルス』/親切な暗殺

 こんなに静かな暗殺って、存在するんだな……。


 辞書で調べたら、【暗殺:(政治・思想などで対立する立場の)人を密かに狙って殺すこと】だって。

 対立か。思想は根本的に異なる。

けど、私は君主に一切反論しないから、対立は存在しない。

 密かではある。彼は家を一歩でも出ると、とてもいい夫だから。

仮面ではなく、まるでそちらが本来の彼の顔であるかのように。


 私は何をやらせても失敗する出来損ないで、一人では生きられない無能で、夫の言うことが全て正しい。




 暗殺って、遠くからスナイパーが一瞬で仕留めるものというイメージだったけど、こんなに近い距離でじわじわとじっくり時間をかけても成立するんだな。

 病院のベッドの上で、久しぶりに観たドラマ。

テロリスト組織は、何年も時間をかけて潜入したり、下準備が必要らしい。

そういうことか。


 最後にトリガーを引いた、電話をかけてきた女の人は、結果として親切な暗殺者。

3年かけて私の心を殺した方は、貴女に差し上げます。

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