第4話 アナログ巌流島 featuring デジタル混入島

「あの……主に幼児〜小学校低学年向けなんですけど……」

「えぇ、存じております」


 読み聞かせサークルの代表者は、困惑を隠せなかった。

生涯学習センターの職員から勧められたという初参加者は、癖のある……少々香ばしい方だった。


 活動日に自前の絵本や借りてきた紙芝居などを持ち寄るのが恒例となっているのだけど、彼女が差し出したのは『巌流島』。


「孫もおりませんし、アナログ人間なもので若者文化に疎くて……」

「図書館の児童コーナーで面白そうな絵本を見繕っていただければ……」

「『ぐりとぐら』とかね!」

「そうです、それです」

「だからね、古参のぐりぐらコンビ厨が存在するように、小次郎推しや武蔵オタクの二刀流萌えも需要あると思いましてね!」


 ちんぷんかんぷんだった。

その場はなんとかやり過ごし、家に帰って娘に聞いてみた。

「その人、だいぶSNSなどに精通しているよ」

 ちっともアナログ巌流島なんかじゃなかった。


 私達の平和な島に、デジタルが混入した。




#毎週ショートショートnote

2023年6/11~17のお題「アナログ巌流島」・裏お題「デジタル混入島」

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