第5話 アナログ巌流島

 その離島は【アナログ巌流島】と呼ばれている。

一説には、島全体が妨害電波で覆われていて、外部との接触は一切禁止。

島に足を踏み入れたら最後、生きて還れた者はいないという……。


 ミステリー研究会の部室で、彼は某怪談師の口調を真似て

「怖いな―。やだなー、やだなー」と意気揚々と語っていた。

 でも、私が聞いた都市伝説は違う。

「本当の表記は【癌流島】らしい」

「へ?」

「家族に見放された末期がん患者が島流しに……」

「現代の姥捨て山ということ?」

「怪談より闇深いじゃん」


 日記をSNSに投稿した後、サークルの思い出が蘇ってきた。

「ご機嫌ですね」

 いつも優しい看護師さんが食事を配膳してくれた。

「都市伝説の住人になるなんてね」

「え?」

「独り言よ」


 島流しされたわけじゃない。自らここに来たの。

でも、「生きて還れた者はいない」は、あながち嘘ではなかったわね。

通信環境が整っていて、面会も可能な天国に一番近い島……。

ホスピスで幸せな最期を迎える予定よ。




#毎週ショートショートnote

2023年6/11~17のお題「アナログ巌流島」

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