第3話 名を自動転売鬼 ~その2(続編)

 鬼界の転売ヤーは「名無しは鬼非ず」の掟を巧みに利用して、鬼名を奪って同時に自動で改名してしまう。

有名どころは高値で転売できるので、狙われやすい。

手法は、値崩れが起きるのを防ぐため企業秘密だ。


「やい、青鬼! 転売ヤーから買い取ったな」

「な、なんでそれを!?」

「俺が正真正銘の青鬼だから」

「す、すまぬ。有名になってチヤホヤされたかったんだ」

「元の名は?」

「【育児放鬼】さ。子供達が悲しむ姿を見るのがつらくて、つい出来心で……」

「青鬼の属性も憎しみ・怒りだぞ」

「だから後悔してる」

「ちょうどいい。俺の今の名は【輝鬼】だ。陰キャを無理やり陽キャに変える」

「おぉ! 交換しよう」


 こうして無事に青鬼は自分の名を取り戻した。

「インドア志向でひとり好きな奴をウェーイノリでBBQに引きずり込むなんて、逆に悪の所業だろ。苦痛だった」

「元の属性が落ち着くよな。【倦怠鬼】にされて絶望したから、気持ちがわかる」

 同じように名を奪還した赤鬼が答えた。



#毎週ショートショートnote

2023年6/4~10の裏お題「名を自動転売鬼」

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