第27話 『新しい扉』/オラオラするTシャツ手触り

 面倒くさがりで、余程の事情がない限り引っ越ししたくない。

四回目の更新をしたばかりで転居したのは、余程の事情……ストーカー被害に遭ったから。


 指定ゴミ袋10枚入りの各サイズセットに【御挨拶】ののしを付けた品を手に扉の前に立ち、緊張してインターホンを押す。顔を出したのは同年代の男性。

女には懲り懲りしてたから、ほっとした。


 差し出しつつ、オラオラを象徴するTシャツの柄に目が釘付けになっていると

「おー、気が利くぅ!」

 いきなりのハグ。

背中をバンバン叩かれて、呼応しなければと俺も背中に手をまわし返す。

その手触りたるや……光悦としてしまった。

そう、俺は手触りフェチ。

そして、ふわっと香るフローラルな柔軟剤。

え、このドキドキは何!?


 部屋に戻って「オラオラするTシャツらしからぬ手触りと香り」に浸った。

「ま、彼女だろ」

独り言にチクッと胸が痛む。え、何!?


 しばらく行動観察しても、女の気配なしにガッツポーズ!

……新しい扉を開いちゃった!?

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