第29話 『素行不良の王子様』/パフェフンフン33秒

 フルーツパフェの登場をルンルン気分で待つ私を鼻で笑う兄。

「フンフンと鼻を鳴らす犬みてぇだよな」

意地悪なことを言われて、一気にテンションが下がった。

自分だって、顔に似合わず甘党なくせに。


「もーらい!」

 到着から33秒、兄が生クリームのてっぺんに聳え立つサクランボを奪い取った。

「ひどい!」

 非難の声を上げた私のパフェに、自分のいちごとメロンをのせた。

「うるせぇな。代わりにこれやるから、もう騒ぐな」


 生のさくらんぼは大好きだけど、缶詰のサクランボはあまり好きじゃない。

この時期に奇跡的に揃う、旬のなごりのいちごとはしりのメロンは、大好物。

パフェ待機中のフンフンの主な要因だと兄にはわかっているから、サクランボを奪ったのは敢えての“意地悪”なんだ。

素直に「やるよ」と言えない兄の優しさだと気づいていた。


 私にとって兄は、若干素行が悪い王子様だった。

連れ子同士として出逢った血の繋がらない兄が、初恋の相手だとは……誰にも言えない秘密。

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