第21話 無頼ママチャリ~無類パパチャリ

 前後に子どもを乗せてスイスイ漕いでいく。その疾走感たるや、電動式やギア付きを凌ぐほどの勢い。あんなに細い太ももで、パワフル駆動可能なのが不思議だ。

シングルマザーのあの人は注目の的。というか、敬遠されている。


「上の子と下の子、パパが違うらしい」

「実家と縁を切って頼るところがないみたい」

 【無頼ママチャリライダー】と影であだ名がついている。

会釈する程度の関係だけど、実は憧れていた。


「おつかれさまです」

 彼女にも声をかける、共働き家庭のそうくんパパ。

「電動欲しいっすね。ママチャリって名もやめてほしい。パパだって乗るんだから」

 その爽やかさたるや、清涼飲料水のCMタレント並み。


「男女兼用デザインの抱っこひもにしようか」

「かっこ悪くてできるか」

「送迎もパパ率高めだよ」

「大黒柱の仕事じゃない」

 昭和を生きているような夫に、【無類イクメン】そうくんパパの爪の垢を煎じて飲ませたい。

私も……彼女の長い爪の垢を煎じ方がいいかもしれない。


 

 



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