第23話 チクタク水兵さん featuring 告白水平線

 いかがわしいことをしたいわけではないので、コンセプトカフェで構わないのだが、いかんせん求めているのはセーラー服ではなく、水兵さん。そして、持ち込み衣装は基本的にNG。

その点コスプレ風俗は料金がかさむ分、着用リクエストに応えてくれる店もある。だから、予約した。


 チクタクと針を刻む度に「水兵さん」が時計をチラチラ見ている。

「あのー……本当にサービスなしでいいんですか?」

 ただ話を聞いてくれという頼みに嬢は戸惑いを見せている。


 海辺の高校に通っていた。

「放課後海岸に呼び出す」が意味するのは、一つしかなかった。

告白水平線と呼ばれる海岸で30分無言の末、困り果てた彼女が「これあげる」と渡してきたのがチクタク水兵さんだった。

地方銀行のノベルティグッズ。僕に押し付けるようにして、立ち去った。


 針に付いている水兵さんに彼女を重ねて、虚しく眺める日々を脱却したい。

「ずっと好きでした」

目の前に広がるベッドは、あの日の水平線のようだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る