第10話 ほんの一部スイカ

「おかおにしましまできてる?」

「うん」

 娘は怯えた顔をした。

急に力尽きてお昼寝後、ついたござの跡を微笑ましく感じただけなのに。

 

「ママ、うれしいの?」

 娘はとうとう泣き出してしまった。


 嗚咽が落ち着いて事情を聞けば、「種を飲み込んじゃった」と報告された夫が「お腹から芽が出るかも。顔も縞模様になるぞ」と脅したらしい。

 ほんの一部スイカになる恐怖に加え、母親がそれを喜んでいる魔女のようで恐怖心が倍増したらしい。

夫を責めると「古くからある、親から子への伝承みたいなもんだろ」と悪びれない。


 寝室で眠っていると夜中にメキメキと音が聞こえて、娘の腹を突き破ってつるが伸び続け、重いスイカが私の胸にドンとのしかかり……

いや、夫の腕だった。


 通常川の字は真ん中が子供だが、うちは寝相の悪い夫の隣に私でガードしている。

 夢にまで侵食してきたほんの一部スイカの呪い、全部夫のせいだ。

朝、洗面所で飛び上がるがいい。

アイライナーを手にして、夫の顔に……。

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