第11話 ほんの一部スイカ柄

「これ、こまいやろ?」

「えー、まだ着たい!」


 お気に入りのワンピース、もうきつくて着られへん。

しゅんとする私を見て、おかんが裁ちばさみでジョキジョキ切り出した。


 や、やばい……ヒステリーモード起動しとるとビビる。

でも、いくらなんでも切り裂かなくてもええやろ。

真っ赤だったけど、日焼けと洗濯で色褪せてスイカ色になっていた。

その分夏の思い出が詰まっていたのに……。


 しくしく泣いていると、隣の部屋からミシンの音が聞こえてきた。

覗くと、さっき切り裂いた身ごろにはぎれを縫い合わせていた。


「流行りのリメイクっちゅーやつや」

 得意げに、ほんの一部スイカ柄のスイカ色ワンピースを見せてきた。

肩はリボンのように結ぶ仕様になっているから、着丈は背が伸びた分調節できる。


「オートクチュールやで」

 2年前におかんが縫ってくれたから、大事にしていたワンピース。

本当は関東人なのに商人あきんどの嫁になるため覚えた、微妙なイントネーションの大阪弁をかわいく思えた。

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