410字のショートショート集/世にも奇妙なお題で創作

想田翠/140字小説・短編小説

第1話 顔自動販売機

「あそこに行けば顔自動販売機があるらしい」

 治安が悪い街の路地裏だったので、警戒しながら目指す。

煌々と灯る自販機を見つけ、期待値はマックス。

「もしもイケメンだったら違う人生だろうなぁ」

願望が現実に!


 醤油顔・ソース顔・塩顔辺りかなとラインナップを予想。

だが、想定外の商品名が並んでいた。

笑顔・泣き顔・真顔だと!?

商品説明には【お面を着けると表情筋が勝手に動きます】とある。

 営業スマイルが苦手な奴もいるし、怒られている時にヘラヘラしちゃう奴には真顔が必要かもしれない。けど、俺には需要ないって。


 勝手に「イケメン自動販売機」と脳内変換していた俺が悪い。

 呆然として真顔になった俺は、自分の愚かさに笑い、一生ブサイクなままなことに絶望して泣いた。

……自販機のボタンを一切押していないのに、全て手に入れていた。 


 【売れ筋】とPOPが付いているのは、意外にも泣き顔だった。

強制涙腺崩壊機能が売りらしい。

俺の顔になってみろ、必要ないぞ。



#毎週ショートショートnote

2023年6/4~10のお題「顔自動販売機」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る