第19話 サイコの鶏唐

「【悪魔的に旨い】って最近よく聞くけど、大概は高カロリーなだけだな」

「味の濃さで勝負」

「チーズと温玉頼りなとこあるよな」

 悪態をつきながらも、料理系動画クリエイターが紹介する『【俺史上最高に悪魔的】至高の鶏唐』に釘付けで、唾液の分泌を促されている。


 ジャン負けして買い出し班のジャンケン最弱王が戻ってきた。

「適当につまみも買ってきた」

「鶏唐は?」

 袋を漁る。

「ねぇのかよ」

「頼まれてねぇもん」

 責めるのはお門違いだ。


「噂だけど……銀座のある店で、サイコの鶏唐が提供されてるらしい」

 ジャンケン最弱王は、怪談王でもあった。

「うわ。人肉とか!?」

「足を踏み入れた者は行方不明になる的な?」

「悪魔的じゃなく、悪魔じゃん」

 食欲を減退させるには、効果的だった。


 Z世代の彼らにとってサイコといえば、サイコパスと呼ばれる精神病質者などを思い浮かべるのだろうが……

銀座のその店のメニューは、単に「日本最古の製法で作られた鶏の唐揚げ」に他ならない。

 

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