端から見たらラブコメ――2
ぐっすりと眠った俺は、身だしなみを整えたあと、リビングダイニングで雛野が用意してくれた朝食をとっていた。時刻は九時を過ぎている。かなり遅めの朝食になってしまった。
今朝のメニューは、ハム・チーズ・レタスのサンドイッチと、野菜サラダだ。
雛野お手製のサンドイッチはやはり絶品。ハムとチーズの塩気とうま味、シャキシャキレタスのみずみずしさを、ふんわりしたパンがまとめ上げている。シンプルな具材ながら奥行きを感じる味わいだ。きっと、俺にはわからない工夫がいろいろと施されているのだろう。
冬眠前のリスみたいに夢中でサンドイッチを頬張る俺を、向かいに座った雛野が微笑ましげに眺めていた。
「今日のサンドイッチも美味しいなあ」
「そう言ってもらえたら作った甲斐があるよ」
雛野が「えへへへ」と顔をほころばせる。褒めた俺のほうが嬉しくなるような笑顔だ。Win-Winとはこのことだろうか。
「ところで、雛野はいつの間に部屋に上がったんだ?」
「え? あきくんが上げてくれたでしょ?」
「そうだったっけ?」
俺は首を捻る。
おかしいなあ、そんな記憶ないんだけどなあ。
腕組みしながら記憶の棚を漁っていると、雛野が探るように
「……もしかして、覚えてない?」
「ああ」
「なでなでも? 役得も?」
「なにそれ? どういう意味?」
「き、気にしないで! 覚えてないならいいの!」
謎の発言をした雛野がブンブンと両手を振る。気にしないでって言われたら余計気になるんですけど。
「うーん……ぼんやりとなら思い出せるかも」
「へぅ!?」
「たしか、寝間着姿がどうのこうの……」
「わあぁああああああああ!! 思い出さなくてもいいってばぁああああああああ!!」
目を
「そそそそれより、今日の予定を話したいんだけど、いいかな!?」
「あ、ああ。大丈夫」
雛野が話題を逸らしにかかる。あからさまな誤魔化し
俺が追求しなかったからか、雛野が胸を撫で下ろし、話を進めた。
「わたし、午前中は荷解きをしたいの」
「まだ済んでないのか? 手伝おうか?」
「大丈夫。あきくんはお仕事に集中して?」
「けど……」
「本当に大丈夫だよ。むしろ、あきくんの邪魔をしちゃうほうがわたしにとっては
雛野は穏やかに微笑んでいた。嘘偽りなく心からそう思っているらしい。
わずかな引け目と後ろめたさを感じつつも、俺は頷く。
「わかった。けど、手伝ってほしいときは気軽に言ってくれていいからな?」
「ありがとう、あきくん。荷解きの区切りがついたらお昼ご飯を作りに来るからね? お互い頑張ろうね?」
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