第14話 友達失格

次の日。

何となく気分は重い。


教室に入ると、視線が私に集まった。

怖くて視線をすぐそらした。

見渡すと、ももちゃんはいない。

まだ体調悪いのかな……


そういえば華音ちゃんもいない。

彩花ちゃんは1人で席に座っていた。


教室の雰囲気が悪い。

女子たちが集まって何かひそひそ話てる。

男子たちも集まる。

……その視線が怖い。

すると、女子たちの会話の声が大きくなった。


「昨日あの2人ついにやらかしたらしいよ」


あの2人って、彩花ちゃんと華音ちゃんのこと、だよね。

あれ、わざと彩花ちゃんに聞こえるようにしてる、のかな。

表情も怖い。

笑ってるけど、歪んでて笑ってないように見える。


「知ってる知ってる!部活の帰りに生徒指導室から出てきたの見たし、先生の声ヤバかった」


「うちも見た!放課後、藤宮さんと西園さんをいじめたらしいよ」


「え、やば!」


……みんな、あのこと知ってるんだ。

どうやって広がったんだろう。


「城谷くんと塔山くんに助けられたらしいけどね。ほら、あの人ら2人のこと気になってるじゃん?」


「嫌われたの確定じゃんw」


「まあ自業自得だよね。新学期からとか引くよね……」


「てかいじめるのそもそもダメだけど、藤宮さんと西園さん相手にとかやば……」


「ほんとそれ。自分より可愛い子が許せなかったんじゃない?」


「性格悪!しかもナルシw」


「性格の悪さが顔に出てみっともなw」


キャハハと盛り上がる。

チラッと見ると、クラスの女子の半分以上の子が集まっていた。

その中に、元々彩花ちゃんのグループだった子もいる。

……そういえば、莉緒ちゃん。


教室を見渡すと、ちょうど入ってきたところだった。

さっきの女子たちの会話を聞こえてしまったのか、ものすごく顔色が悪い。


女子たちも莉緒ちゃんのことを見ている。

そしてまたひそひそ話をする。

……すごく、居心地悪い。

けど、一番辛かったのはももちゃんだ。


「あの、絵奈ちゃん」


莉緒ちゃんが私に話しかける。


「……莉緒ちゃん」


莉緒ちゃんは今にも泣きそうな目で私を見ている。

……演技、じゃない。


「話が聞こえたんだけど、昨日何があったの……?」


「えっと、ね……」


私は昨日のことを全部話した。

ももちゃんが彩花ちゃんと華音ちゃんにいじめられたこと。

水をかけられてももちゃんの具合が悪くなったこと。

私も水をかけられそうになった。

けど、武尊と紘夢が助けてくれたこと。


私が話し終えると、莉緒ちゃんは泣いていた。


「……ごめんなさい」


「ど、どうして謝るの?」


「私が昨日休んでももちゃんも、絵奈ちゃんも守れなかったから……!」


「体調悪かったんでしょ?それは仕方ないと思う」


昨日の朝、ちゃんと連絡が来たもん。


「……私が休む前からももちゃんは仲間外れにされてた。彩花ちゃんたちだけじゃなくて、あそこにいる一部の人たちも……私がそばにいるべきだったのに何もできなくて……ごめんなさい……」


涙が止まらない莉緒ちゃんを周りの女子たちは無表情で見つめてる。


「莉緒ちゃんは昨日一緒に帰ることになった時、ももちゃんが孤立しないように話題をふったりフォローしてたよね。何もしてない、ってことはないんじゃないかな。そうじゃなかったらももちゃんはもっとつらかったと思うよ。何なら私が一番何もしてないし……」


「絵奈ちゃん……」


「それに、彩花ちゃんたちとは関わらなければ良いし、またももちゃんが辛い目に遭ってたら私たちで守るしかないと思う。ももちゃんと友達であることは変わらないから」


「……え、絵名ちゃぁんっ……!!」


莉緒ちゃんはさらに泣き出してしまった。

私は慰めることしかできなかった。

……本当、私って何もできない。



友達、失格だ。



キーンコーンカーンコーン



変なタイミングでチャイムが鳴った。

みんな自分の席に戻る。

莉緒ちゃんも泣きながら席に戻った。


この日、ももちゃんは学校に来なかった。

先生も何だかいつもと違う感じで、居心地が悪そうだった。

そして、女子達から彩花ちゃんへの視線が痛くて私も先から動けなかった。


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