第6話 課題テスト開始!

よし、国語は大丈夫そう。

漢字も書けるし、記述も書けそう。

国語の課題ワークを閉じる。

英語はさっき家でやったから……あとは数学。

昨日の夜にやったけど、あやふやなところがまだある。

数学のワークをぺらぺらめくり、付箋のページを1個1個確認する。

……そうそう、ここだ。

まずは公式に当てはめて、計算して……よし、いけた。


「おはよ、絵奈」


「わっ!お、おはよ武尊」


武尊は嬉しそうに微笑む。

相変わらずほわほわしてて可愛いなぁ。


「こんな朝早くからやるん偉いなー」


武尊が席に座ったから私は後ろを向く。


「あはは……悪い点数取りたくないのと、あまり眠れなかったんだ」


用意をしていた武尊の動きが止まる。


「それ大丈夫?寝不足?」


「ううん、大丈夫だよ。これでも6時間は寝たし」


「まあ……6時間ならいいか。テスト終わったらちゃんと寝るねんで?」


「うん。ありがとう」


やっぱり優しいなぁ。

昔から体調を気にしてくれる。


「……絵奈相手でも俺は容赦せんよ」


「えっ?」


武尊はにやりと笑う。

うわああ、やっぱり本気なのかぁ。


「もちろん私も負けないからね!」


武尊は満足そうに笑い、席に座った。


さてっと、あと付箋のところは……

あ、そうだこの図形の問題だ。

えっと、分けて考えた方が早いんだっけ。

落ち着け落ち着け。

……ああ、単位違う。


「あっ」


消しゴム、落ちた。

どこ行ったんだろ。

椅子から立って、消しゴムを探す。


「絵奈、どしたん?」


武尊が私の様子に気づき、立ち上がった。


「えっと、消しゴム落としちゃって」


「……もしかして、これ?」


「「えっ?」」


横から声をかけられ声の方を見ると、黒髪をポニーテールにし、モデルさんみたいにすらりとした手足の子が手に消しゴムを持っていた。

……心臓が強く跳ね始める。


「あ……う、うん、私のだよ」


「良かった。歩いてたら足元に転がったから誰のかわからなくて。はい」


慌てて受け取る。


「あ、ありがとう、え、えっと……」


しまった、名前分からない。


「ああ、うち、藤宮もも」


「えっと……ありがとう藤宮さん」


「ももでいいよ。他校の友達もそう呼んでるから」


「じゃあ……もも、ちゃん」


「ありがと、絵奈」


満足そうに藤宮さん、じゃなくてももちゃんは微笑んだ。

……絵奈って呼んでくれた。


「な、何で名前知ってるの?」


「小学校同じだったでしょ?雰囲気変わったからあれってなったけど西園さんじゃんって思って」


藤宮ももちゃん……うーん、覚えてないな。

名前は聞いたことある気はするんだけど。


「あー……覚えてない?」


「うん……ごめんね」


「いいよいいよ。てか何で謝るんよ」


なぜか少しだけ笑うももちゃん。

私もつられて笑ってしまった。


「あ、休み時間終わっちゃう。またあとでね、絵奈」


「うん。いろいろありがとう」


席に座ろうとすると、武尊が嬉しそうに私を見ていた。


「何?武尊」


「いや、良かったなぁって」


「えと、ももちゃんのこと?」


「そう。絵奈に新しい友達ができて良かったなぁって」


……友達。

私には小中学校の友達が少ない。

みんな他の高校に行っちゃった。

だからこの高校には武尊と、それからももちゃんしかいない。


「そうだね……嬉しいな」


嬉しくて、温かい気持ちが胸に広がる。


「課題テスト始めるぞー」


先生が入るなり、憂鬱な声があちこちから聞こえた。

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