第2話 テスト対策……?
お昼休み。
ももちゃんは2時間目の途中から遅れて来た。
そろそろワークの提出期限が来るよな……なんて思いながらいつものメンバーとお昼ご飯。
今日は卵焼き、唐揚げ、ミニグラタン、ブロッコリー&トマト、それからご飯。
お母さんのお弁当はいつだって美味しい!
「絵奈のお弁当美味しそうだね」
ももちゃんが私のお弁当を見て言った。
「えへへ。ありがとう。ももちゃんのも美味しそうだよ」
ももちゃんのお弁当はどちらかというと野菜が多めの和食って感じ。
もちろん、バランスは良いメニューだよ。
モデルだし、いわゆる体型維持ってやつも大事だもんね。
「莉緒は手作りなんだよね」
今度は莉緒ちゃんのお弁当。
莉緒ちゃんのはサンドイッチで、すごく美味しそうだし、何だかオシャレ。
「て、手作り!?」
「うん。お母さんもお父さんも仕事だから。弟の分も作らなきゃだし」
そっか、共働きなんだ……
弟の分までお弁当作るってすごいなぁ。
私も高校生になったし、自分で作ってみようかな。
そしたらお母さんの負担を減らせるもん。
「……莉緒、元気なさそうだけど何かあったの」
ももちゃんの声が少し低くなった。
たしかに、ちょっと元気ないかも。
「うーん……テストが嫌だなって……」
ああ……テスト。
朝も嫌だって言ってた。
テストという言葉にももちゃんも思わずちょっと嫌そうな顔。
「中学と違って1学期は中間も期末もあるし、教科も多いから……」
「テスト中は仕事お休みにしてもらったけど、どっちにしろやばいわ……」
あ、ありゃりゃ……すっかりブルーな気持ちになっちゃってる。
わ、私だってテストは嫌だよ!
教科は10教科だもん。
中学の時は5教科だったけど、高校は国語は古典と現代国語とかって全部2倍になるから量も増えるし、日数も増える。
まだテストの形式とか出題傾向とかわからないから。
……それに、この前の課題テストはきっとまぐれだ。
「そうだ、テストといえばさっきの数学全然わからなかった!」
「……ああ、さっきのね。絵奈はわかった?」
「えっと、どんなやつだっけ」
莉緒ちゃんが鞄から教科書とノートを出し、パラパラページをめくる。
「これ!教科書見てもわからなくてさ……」
私の高校では数学は3つのクラス分かれて授業をする。
今は出席番号順で3つに分けてやってるんだけど、先生によって教え方が違うみたい。
私も、ももちゃんも莉緒ちゃんもクラスが違うからお互いどの先生なのかもわからない。
「あーその問題か!」
必要条件と十分条件の問題。
これは難しかったなぁ。
「必要条件と偶然条件の違いがわからない。何がどうなってこうなるのかも……頭パンクだよ……」
机に突っ伏してしまった莉緒ちゃん。
充電ゼロになってしまったみたい。
あはは……と苦笑いになるももちゃん。
「お昼食べ終わってから教えるよ!」
「ほんと!?ありがとう……」
「例えば、ぶどうがあるとするでしょ?」
「「うん」」
ノートにぶどうのイラストを描く。
「ぶどうは果物だって確実に定義できて、ぶどうであることは果物であるって保障する十分な条件だから十分条件」
ぶどうの周りに円を書いて、さらに大きな円をさっきの円ごと囲んで、「果物」と分類する。
「逆に果物はぶどうですって言い切れないよね?他にもいちごとかりんごとかあるから必要条件」
果物と分類した円の中にいちごやりんごを描く。
「「うん」」
教科書を今度は参考にして。
「こっちの問題なら、Xの二乗=1とX=1、か。Xの二乗=1ならX=1って必ず決まる?」
「マイナス1があるから……
「そう!だから必要条件。逆にX=1はXの二乗=1だって必ず決まるから……?」
私の説明でわかる、かな。
「「十分条件」」
「正解!ちなみに偽の時は反例も書かなきゃだからその時はマイナス1って答えたら良いよ」
2人ともわかってるきてるみたい。
「絵奈ちゃんの説明わかりやすかった!先生よりわかりやすかったよ!」
「ええ、そうかな?」
「うちのクラスの先生、すっごくわかりづらい」
ももちゃんが苦い顔をする。
そ、そんなにわかりにくい先生だったのかな……?
「すごいなあ、絵奈ちゃん。何でもできるよね」
な、何でもできることなんてないよ……!
「そんなことないよ。先生の真似しただけだよ」
私のクラスの先生はさっきみたいに果物で例えてた。
女の先生だからっていうのもあるかもしれないけど、ファンシーというか、可愛い例えで教えてくれるんだ。
この前はK-POPを例えにしていたなあ。
「わかる。絵奈、この前の50m走女子の中で1位だったもん」
莉緒ちゃんがうなずく。
「ええ!?そうだったの!?」
クラスのみんなが一斉にこちらを見る。
視線がみんな私に集まる。
慌てて口をおさえる。
私が2人を見ると同時にうなずいた。
……知らない知らない。
1位だなんて知らない。
名前順で走ったし、人の記録を見てしまったら嫌なに思う人もいるから記録を先生に言う時は絶対に記録表を見ないようにしてた。
だから他の人の記録は1個も知らない。
ももちゃんのも莉緒ちゃんのも。
「……絵奈?」
かすれた声でももちゃんがいつの間にかぼんやりしていた私を覗く。
「……ももちゃんは、モデル頑張ってて、莉緒ちゃんはコミュ力高いの、すごく羨ましいよ」
2人がえっ、と言うように私を見る。
微妙な空気に突っ込むようにチャイムが鳴った。
「ご、ごめん、絵奈ちゃん」
莉緒ちゃんがなぜか謝る。
午後の授業はあまり集中できず、内容が頭に入らなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます