第13話 また、昔みたいに
騒動のせいでお昼は過ぎ、2時だった。
下校する足が重い。
何となく気分も重い。
武尊は私の横、紘夢は私達の後ろを歩く。
ももちゃん、大丈夫かな。
水かけられたから体も冷えてて、熱もあった。
……そうだ、調べてみよう。
検索サイトを開いて、「藤宮もも」と検索。
画像のページを見ると、そんなに画像は出なかったけどももちゃんの画像が出てきた。
まだ今月デビューしたばかりなんだ。
画像は、雑誌からの画像。
「Stella」専属モデルオーディションの合格者紹介ページかららしい。
4人の合格者が集まった画像がある。
背景は濃い紫の空にキラキラの星が飾られてて、ももちゃんはセンター。
4人の中ではももちゃんが1番背が高いみたい。
別の画像は、4人の合格者が1ページに2人ずつ載ってる。
4人とも少しずつデザインが違う黒いワンピースと、星の髪飾りをしてる。
ももちゃんは黒髪を高めの位置にポニーテールにしてて、肩出しデザインの黒ワンピース。
オーナメントって言うのかな。
星のオーナメントが上からぶら下がっていて、それを手に持ってこちらを見てポーズを撮ってるももちゃんは可愛いし、カッコいい。
もちろん、他の3人も可愛いけどね。
動画の方を見てみると、なんと面接の公開オーディション動画があった。
ももちゃんの動画が特に再生されてる。
どうやって合格者を決めたのかはわからないけど読者の中でも、ももちゃんは人気、ぽい。
私はスマホをカバンに入れる。
ももちゃん、合格できて絶対嬉しかったよね。
それなのに……何であの2人はももちゃんをいじめたんだろう。
彩花ちゃんも応募したって言ってた。
嫉妬なんだろうけど、だからっていじめるのは絶対におかしいよ。
「絵奈」
武尊は急に立ち止まり、私を見ていた。
何をするのかと思うと、武尊は寂しそうに笑う。
「絵奈、よう頑張ったな」
と言って、私の頭をぽんぽんと叩く。
叩き方がすごく優しい。
……私は、頑張ってた、のかな。
結局私はももちゃんを助けられなかった。
それなのにっ……
「絵奈!?」
「絵奈……」
目から涙がどんどん溢れる。
何でだろう。
何で泣きたくなったんだろう。
何で涙が止まらないんだろう。
「絵奈、絵奈……」
私を抱き寄せた武尊もなぜか泣きそう。
武尊のあたたかい優しさに安心しちゃってさらに涙が出る。
すごく情けない。
友達、幼馴染みの前で泣くなんて。
「絵奈は頑張ったよほんまに。怖かったよな」
武尊の優しい声が心に滲む。
怖かったから、なのかな。
それとも……悔しかったから?
やっとおさまって落ち着いた。
どれだけここで泣いてたんだろう。
あんなに泣いたの、久しぶりだ。
武尊は私から離れると、今度はいつもの優しい笑顔で私を見る。
そして、私の後ろにいる紘夢に視線を移した。
「紘夢、ありがとうな。協力してくれて」
……協力?
「え、いや……俺、作戦勝手に変えて突っ込んだし……」
「紘夢が突っ込んで良かったし、紘夢がおって良かったと思う。じゃなかったら俺1人じゃ無理やった。だからありがとう」
2人、協力してたんだ。
「えっと……紘夢、ありがとう」
久しぶりに紘夢って呼んだ気がする。
話すの4年ぶりくらいだから。
紘夢の目が大きく見開く。
あ、、嫌だったかな。
「え、絵奈っ……!」
「紘夢!?」
今度は紘夢が私に抱きついた。
「ごめん、絵奈……あの時、助けられなくて、ごめん……ごめんなさい……」
あの時。
一瞬フラッシュバックしたけどすぐに消える。
もうあの時のことなんていい。
紘夢は泣きながら私に謝っていた。
「……大丈夫だよ、紘夢。私はもう、大丈夫だから謝らないで」
「絵奈……」
紘夢が顔を上げると至近距離で私と目が合った。
涙で目は潤んでるけど、昔と変わらない紘夢だ。
「あーもう!こんな重たくならんでええねん!」
「「わっ!?!?」」
武尊の声に暗い空気がどこかに飛んでいき、私と紘夢をまた抱き寄せ、その上に武尊がくっついた。
な、何この状態!?!?
武尊が1番背が高いからだけどさすがに近い!!
「良かった。これで仲直りやな、紘夢」
「え、う、うん……?」
武尊、もしかして知ってたのかな。
嬉しそうな武尊。
そしてなぜか紘夢の顔が真っ赤。
「っ!あははは!」
何だかおかしくて思わず笑ってしまった。
「な、何絵奈、どしたん?」
武尊が慌てて離れた。
「紘夢、顔真っ赤だからっ……!」
「!?」
「ほんまや!?」
紘夢の顔がさらに赤くなる。
……ふふ、可愛いな。
「な、何笑ってんの」
「あっ、ご、ごめん」
「いっ、いや、えっと、その……」
「あはは!また紘夢赤いで!」
「なっ……」
紘夢は自分の顔に手を当てる。
その仕草が可愛い。
「また、3人でいられて、嬉しいな」
武尊がぽつりと言った。
「そうだね」
「うん」
本当だ。
また昔みたいに、3人で一緒にいられるんだ。
「じゃあ、帰るか」
優しい武尊とツンデレの紘夢。
大好きな、大切な幼馴染み。
……嬉しいよ、本当に。
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