第7話 ついに開幕!!

「よいしょっと」


朝の7時半。

いつもならまだ家だけど、今日は教室にいる。

今日と明日に向けて、シフトのシュミレーションをするんだ。

クラスの雰囲気はとてもふわふわしたようなドキドキわくわくした感じで、私もとても楽しみだ。


「それにしても絵奈、よくこれ作ったね……」


紘夢が苦笑いで言う。

視線の先には段ボールで作ったポップコーンショップ、チュロスショップ、それからアイスキャンディショップだ。


ダンボールの向かい合わせの面2つを太い縁を残しながら切って、空いた部分を透明シートで貼る。

切った部分は屋根にして、紙屑で作ったポップコーンに、絵の具で茶色に何となく垂らしたらキャラメルポップコーンが完成!!

あとは、ダンボールや屋根をを明るい赤で塗ったら、販売中みたいに出来立てのポップコーンを入れ物に入れてみたり。


チュロスは、元々ガタガタがついているダンボールをくるくるって巻いただけ。


アイスキャンディもダンボールで立体的に作ったんだけど、形はハート、ダイヤ、クラブ、スペード。

これは遊園地のシンボルっていう話から思いついたもので、それぞれ苺、ソーダ、オレンジ、ぶどう味。

本物みたいに透明感は出せなかったけど、なかなか良い出来上がりになったんだ。

完成したアイスキャンディは、あらかじめダンボールに穴を開けて、そこに差して販売。


遊園地って甘い香りがする。

それを再現したくて、昨日学校ではギリギリまでお店の外装を作って、家ではその続きと残りを徹夜して作った。


「これで、完璧な遊園地になったよな。さすがやわ、絵奈」


武尊が嬉しそうに言う。

えへへ、頑張って作った甲斐があるな。


「あ、いた!絵奈ちゃん!」


廊下から莉緒ちゃんの声が聞こえた。

振り向こうとすると、急に両腕を拘束された。


「……へっ??」


「絵奈ちゃんっ。ちょっと更衣室に行こうか」


私の右でニコニコの莉緒ちゃんが言う。

って、莉緒ちゃん!?!?!?


「ど、どうしたの莉緒ちゃん、その髪型」


莉緒ちゃんはなんといつものハーフアップではなく、ハーフツインをしていた。

何だか新鮮だし、可愛い!!


「話は後。ほら、行くよ」


左にはももちゃんが、ってももちゃんも!?!?!?

いつとはポニーテールにしてるももちゃんが、ツインテールにしてるっ!!

可愛いいいっ!!


なぜかヘアアレンジをしている2人はわたしをぐいぐい引っ張って、廊下に出される。


「……え、ええええっ!」


どういう状況!?

どこに連れて行かれるの!!



更衣室に座らされ、じっとしている私。

教室に行く前もここに来て、荷物を置いたんだけど、まだ集合時間じゃないから女子たちみんなはおしゃべりをしている。

というか、女子たちみんなすごくキラキラしてるのに見えるのは何でだろう?


「よし、ももちゃん!頼んだよ!」


「任せて」


「何が始まるの……?」


「そんな怖がらないでよ。みんなやってるんだから」


「みんな……?」


周りをよく見ると、女子たちはいつもと違う髪型をしていた。

私の高校は髪型は派手じゃなかったら良いと言うルールだ。


「先輩から聞いたんだ。文化祭とか行事になるとみんな普段とは違ったヘアアレンジするんだって。せっかくだし私たちもやろうって話になったんだ」


「へ、へえ、そうなんだ……」


だからみんなキラキラしてるんだなぁ。


ももちゃんはというと、慣れた手つきで私の髪をといたり、軽く結んでみたり。


「絵奈は普段おろしてるから、全部まとめちゃった方が新鮮かなぁ。それともおろしてもいいよね」


「えーどっちだろ……ちなみにどんな感じので悩んでるの?」


「考えてるのは、こう編み込んでおろすか、編み込んでツインテにするか」


「どっちも良さそうだけど、おろしたら暑くないかな。絵奈ちゃん結構長いから」


「それもそうだね。じゃあ、ツインテにしとこ」


なんて会話をしているももちゃんと莉緒ちゃんはすごく楽しそう。


「絵奈の髪、綺麗だね。すごくやりやすい」


「え、そ、そうかな?」


「うち、サラサラすぎて逆にやりにくいんだ。お母さんの遺伝なんだけど」


たしかに、ももちゃんのお母さんものすごく綺麗の髪だったなぁ。

そっか、サラサラすぎても結いにくいんだ。

初めて知ったよ。


「ももちゃん、反対側やるよ」


「はーい」


2人とも編み込みできるんだ。

私やったことないな。

中学の時は基本1つくくりだったし、今はおろしてるだけだし。


数分が経って、終わったのかももちゃんが鏡を出して見せてくれた。


「ええっ!?」


鏡に映る自分が自分じゃないみたいだった。

上の髪は綺麗に編み込まれていて、残りの髪は下の方で2つくくりになっていた。

2人とも器用だな……

てか、私、初めてこんな髪型したよ!!


「絵奈ちゃん、すっごく可愛いよ!」


「試した甲斐あったよ」


2人は満足そう。

何だか照れるというか嬉しい。


「2人ともありがとう!」


ももちゃんに鏡を返して、そろそろ集合時間だから教室に戻った。



「「えっ……」」


教室に入るなり、紘夢と武尊と目が合った。

紘夢はなぜか顔を赤くしているし、武尊はなぜか嬉しそうにしてる。


「え、絵奈……?」


紘夢がぼそぼそ何かを言う。


「絵奈、めっちゃ可愛いやん!一瞬誰かわからんかった」


武尊が明るい声で言う。


「あ、ありがとう……?」


やたら視線を感じるなと思ったらクラスメイトみんなが私たちを見ていた。

コソコソ話していたり、チラチラ見たり……

珍しい髪型だからかな、ちょっと恥ずかしいからあまり見ないで欲しいな……


すると、担任の先生がやってきた。


「みんな揃ってるな??よし、シュミレーションやるから各自シフトの位置に移動!」


余裕を持って、開会式の集合時間に間に合うように私たちはシュミレーションをした。

実際の動きや、遊園地という場所の雰囲気を出すために話し方をスタッフさんみたいにしてみたり。

私たちの教室は二日間限定遊園地だ。

お客さんには楽しんでもらわないとだよね!!


開会式は生徒会長である将也先輩が司会をやっていた。

ステージに立つ将也先輩はやっぱりすごくカッコよかった。

ちょっとドキドキしたけど、いつもより目がキラキラしてて、本当に楽しみにしているんだなって思った。


開会式の次はストリングオーケストラ部の演奏で、聴き終わったら各クラス・部活の出し物を回れる。



ついに、待ちに待った文化祭が始まったんだ……!!

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