第14話 解決……?
「ごめんなさい!!」
「え、ええっ?」
金曜日。
生徒会室。
な、なぜか今、立川先輩、土下座して私に謝っています。
「えっと、何かされましたっけ……」
「えっ?」
立川先輩がきょとんとしたように顔を上げる。
「はい……?」
「はあ……これだから鈍感は……」
紘夢が小さくため息をつく。
鈍感……何の話だろ。
「絵奈が優しくて良かったねー本当に。俺だったら容赦ないよ」
将也先輩がなぜか棒読みで、しかもだいぶ大きめの声で言う。
「……そうかもね」
こ、これ何がどういう状況なんだろう。
全く追いつけていない。
「とりあえず、まずはごめん。あんな言い方して本当にごめん」
今度は将也先輩が謝る。
「書類作ってもらっておいてお礼無しで帰れなんて言って本当にごめん。書類も全部作ってくれてありがとう」
「全然それは良いんですけど、何があったんですか?」
御三家が顔を見合わせる。
紘夢が「ダメだこりゃ」というように頭を抱える。
「いいか、これが本当の天然ってやつだ」
東先輩が立川先輩にこそっと何かを言う。
「わかってる」
「ま、まあ、絵奈が良い言うてるんやから解決ってことにしときましょうよ。関係ない部外者が言うのもですが」
武尊の明るい声にみんなの表情が和らぐ。
立川先輩も思わず笑ってて、何だか嬉しかった。
初めて笑ってるところを見たから。
「将也先輩。私、お手伝いできて本当に良かったです。生徒会の仕事が大変だってことは分かっていたんですけど、書類だけでこんなに作らないといけないんだなってビックリで。それ以外にも他の仕事いっぱいあるはずなのにたった4人でやっていたなんてすごいなって思いました。だから立川先輩、私に仕事をやせていただきありがとうございました。生徒会の大変さを実感できました」
「え、あ、う、うん……?」
御三家がきょとんとしている。
紘夢の目が座っている。
武尊はニコニコしている。
「だから、将也先輩!」
「え、う、うん?」
「私に、生徒会のこともっと教えてください。私、決意できたんです」
「け、決意?」
「はい。『生徒会長になること』です」
「「ええええええっ!?!?!?!」」
紘夢と武尊が同時に叫ぶ。
東先輩と田原先輩が耳をふさぐ。
「この前の将也先輩の朝の放送、『自分の行動が他人に迷惑をかけないように』って言っていましたよね。逆に捉えば、『自分の行動が誰かの役に立つように』ってことになりますよね。私、本当は生徒会のお手伝いを辞めようかなって考えていたんです。他の人に迷惑をかけるならやめた方が良いって」
「絵奈……」
「でも、それだとまた逃げることになるから、逆のことをしようって思ったんです。人の役に立てるように、人の役に立つことをしたい。だから私は将也先輩のような人になりたいんです」
「人の役に、立つ、か……そうか」
将也先輩は嬉しそうにはにかむ。
これ、あの時の笑い方と似てる。
「俺のこと、そんな風に見てくれてありがとう。本当に、ありがとう」
「うわああ将也泣いてる~」
東先輩の一言に空気が一変。
「え、嘘!?!?」
「泣いてないよ!ちょっとウルって来ただけ!!」
「え~~もう、涙もろいんだから~」
「うるさい」
「でも分かるよ~?絵奈ってものすごくいい子だよね~!」
その瞬間将也先輩の目に火がつく。
「おおおおいお前!!!それ以上言うならペナルティ増やすぞ!!!」
「ひえええええそれは勘弁してください将也様……」
「様って何だよ気持ち悪い」
「な、なあ、今日って印刷の日じゃなかった?」
田原先輩がおずおずと言う。
「「そうだった!!」」
「ったく……既に準備終わってるよ」
立川先輩が呆れ気味に言う。
「マジっすか!サンキュー!」
「急いで職員室行くぞ!!あ、3人はもう帰りなよ。あと印刷先生に頼むだけだから」
「え、良いんですか?」
「うん。あ、明日来てもらえる?明日で仕事はほぼ最後になると思う。紘夢も武尊も来なよ」
「じゃあ遠慮なく!!」
「木村先輩が言うなら」
わあ、2人も来てくれるんだ!!
嬉しいなあ。
「それじゃ、また明日」
「「「はい!!!」」」
生徒会役員たち別れて、久しぶりに3人で帰る。
「とりあえず絵奈、お疲れ様」
「ありがとう、武尊」
「てか、書類全部作ったんほんまなん?」
「うん。参考資料があったからそれを使って入力しただけだよ」
「ってことはほとんどの作業を絵奈がしたってこと?」
紘夢がなぜか不機嫌そうに言う。
「それは……どうだろう。あの参考資料作ったのたぶん立川先輩だし、印刷前に先生の確認取らないとだったし、印刷もあるでしょ?」
「よく考えたら印刷って大変よな。何種類かの書類、いっぱい印刷せなあかんのんやろ?」
「「たしかに」」
「運んでる時にバランス崩して紙バラバラになってるところが真っ先に思いつく」
紘夢が意地悪そうに言う。
「あはは!たしかにそうなるわ。今から戻るか?」
「さすがに嫌だ」
紘夢はきっぱりと言う。
私、将也先輩みたいになれるかな。
いつか……なれたら良いな。
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