第15話 最後の絆
土曜日。
今日もお手伝いの日だ。
「あ、絵奈!」
いつものように登校していると、いつも通り後ろから武尊の声。
朝から元気だなあ。
「おはよう!」
「「おはよう」」
土曜日に登校って、何だか不思議と言うか新鮮かも。
集合は9時。
まだ余裕はあるかな。
もしかしたらまだ先輩たち来てないかも。
校門を通り、生徒会室に向かうと運動場から声が聞こえる。
あ、野球部だ。
土曜でも練習するんだな。
武尊が生徒会室のドアをノックする。
奥から「はーい」と聞こえる。
あ、もう来てるみたい。
「え、来るの早くない?うちの生徒会長まだ来てないよ」
出てきたのは東先輩だった。
「まずは『おはよう』でしょ」
立川先輩がひょこっと出てきて呆れ気味に言う。
「あ、そうだった。おはよう諸君」
「いや誰よ」
「「おはようございます」」
「おはようございます!」
「相手しなくていいから」
東先輩って面白いところがある。
そこに立川先輩がツッコむからリズムが良い。
「相手しなくて良いってひどくないか!?」
「はいはい黙ってて」
「わー絵奈じゃん。紘夢も武尊もおはよう」
「おはようございます!」
「「おはようございます」」
今度は田原先輩が出てきた。
「キム、遅くなるみたい。寝坊したっぽい」
「言い出しっぺが何してんだよー」
「言い出しっぺ?」
「絵奈たちを誘ったこと。別に……ね?土曜にわざわざ来てもらう必要はないというか……」
「まあ、キムのことだから最後までみんなでやり遂げたかったんだと思うよ」
「「たしかに?」」
将也先輩、やっぱり愛されているんだなって思った。
信用されてる。
一層生徒会長になりたいって気持ちが高まったかも。
「遅れてごめんなさい寝坊しました」
9時5分に将也先輩は生徒会室に来た。
「はい、お前ペナルティな」
「あとでね。最後の作業はこの書類を分けることと、委員会進行表制作、演劇関連書類の制作、露店関連書類の制作。意外と多いからその分時間もかかると思う。先に分けておこう」
机の上の大量の書類。
先生方も、印刷大変だっただろうな……
「俺こっちやるわ。武尊ちょっと手伝って」
東先輩が紙を抱える。
「承知!」
「俺こっちのほうやります」
紘夢も紙を抱える。
それを田原先輩が支える。
「俺もやる」
残った私たちは残りの分だ。
「えっと、これはクラスごとだね。委員会で配るから8セットと生徒会と顧問の分で6セット。合計14セット作ったら良いな」
「絵奈は掲示用をお願い。俺らで企画書をやっとく」
「はい!」
14セットだって言ってたよね。
3種類の書類を14セットに分ける。
本番の諸注意と、作業の諸注意の2つと計3枚ずつ。
他にどんな書類があったっけ。
他の委員の書類もあった気がする。
あれ、1枚余っちゃう?
「将也先輩。1枚ずつ余ったんですけど、これって予備なんですか?」
「あ、ナイス。それ予備だから余って正解」
これも将也先輩と立川先輩が分けたものと合わせて完了。
意外と早く終わった。
「キム、終わったぞー」
「こっちも終わったー」
「早いな。次、弘人たちと俺らで露店関連と演劇関連、立川さんと勝吾たちで委員会進行表を頼んだ」
「「「はい!」」」
「承知!」
「「うん」」
今日の将也先輩、いつもとちょっと違うかも。
完全に「生徒会長」の顔になってる。
パソコンを開いて、準備。
私と武尊は学校のタブレット、先輩たちは生徒会用のパソコン。
先輩たちにファイルを教えてもらって作業開始。
へえ、露店も出るんだ。
3年と何個かの部活が担当するみたい。
部活の方は既に決まってるけど、クラスの方はこれから。
それで業者を手配して、売るっていう感じ。
場所は運動場。
レイアウトを設定して、できる露店の種類と、手配できる業者の一覧を入力して表にする。
これで文字の大きさと濃さ、全体のバランスを設定して終わり!
30分もかかっちゃった。
次は文化部やステージを使うイベントの書類。
演劇のことは書かなくて大丈夫みたい。
吹奏楽部、軽音部、ストリングス、筝曲、放送部、教科ダンス、教科音楽。
他の文化部は家庭科部、天文部、書道部、茶華道部、だ。
その諸注意を全部入力して、誤字脱字がないかを確認する。
カチャカチャキーボードの音と、紙の音しか聞こえない。
生徒会室って、こんなに静かなんだ。
隣の武尊もずっと画面を見て、紘夢も無言でやって。
まだまだ作業はある。
……頑張らないと!!
一体どれくらい作業したんだろう。
今は……11時半。
いつもならあと一時間半頑張らないとだけど、さすがに体力に限界が近づいてきた。
お腹もすいてきた。
あともうひと頑張り。
これは展示の奴だ。
パネルや黒幕、パネルの柱の数を入力する。
誤字脱字を確認して……終わった!!
「やっと終わった……」
隣の武尊は机に突っ伏す。
「お疲れ様、武尊」
「ありがと。あれ、弘人先輩とキム兄は?」
「え、いない?」
「勝吾先輩もいないんだよ」
奥から紘夢と立川先輩が出てきた。
「そっちも終わったんか。お疲れ」
「お疲れ。どこに行ったんだろ」
「さあ……」
立川先輩が資料を整理しながらつぶやく。
「先輩、あとは印刷だけですか?」
武尊が聞く。
「うん。データは先生も見れるから先生に頼んでまた分けて今日は終わりになると思う」
「でも、準備期間が始まるとまた仕事あるんやないんですか?」
「ないことはないよ。でも、案の集計とか委員会の司会はほぼ先生たちがやるし、あとは基本文化祭前日と当日くらいかな。先生たち、私たちがクラスの作品に集中できるようにいろいろ考えてくれているんよ。それに、今のところ予定よりずっと早くやること終わってるからだいぶ後が楽かもね」
立川先輩が少し笑って言う。
その言葉を聞いて私たちは何だか嬉しくなる。
手伝って良かったなって。
なぜか立川先輩は机の上を除菌シートで拭き、消毒を用意している。
すると次の瞬間、生徒会室のドアが勢いよくバーン!と開いた。
「うわっ!?!?」
「何やっ!?!?」
「わっ」
「「「お待たせー!!!」」」
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