第4話 思い出のクレープ
『からふる☆クレープ』は私の街では有名なクレープ屋。
種類も多いし、買いやすい値段。
駅前の広場にあって、そこにあるベンチですぐに出来立てを食べれる。
今の時間帯は昼前でとても空いている。
って、久しぶりに来たからすごく迷うよぉ~!!
「どれも美味しそう……」
「な。昔食べてたやつも食べたいし、新しいのも食べたいし」
「……なら2人で制覇する?」
「ええやん、それ」
2人でにひっと笑う。
「じゃあ今日は新作にしてみるか。ちょうど2種類あるし、半分するか」
「うん!!どっちにする?」
新作は『スペシャル苺ホイップ』と『スペシャル苺チョコ』。
どっちも4月限定だし、美味しそう。
「えーどうしよう、迷う……」
「どっちにしろ両方食べれるで」
「そうだけど……」
「わかった。じゃあ、俺が両方買うわ」
財布を出しながら武尊が言った。
「ええっ、そんな、申し訳ないよ」
「ええの。俺がやりたいことやねんから」
「……じゃあ次行くとき私がおごります」
「ん、おっけ」
お店はピンクの可愛らしい車だ。
看板も店のマークも可愛い。
「絵奈は先座っとき。空いとるし」
私も並ぼうとすると、優しい瞳で武尊が言ってくれた。
「あ、うん。ありがとう!」
武尊、優しいなあ。
私も今度お礼しないと。
そうだなあ、席はあそこかな。
日当たりも良いし、木もそんなに近くないから鳥と毛虫の心配もない。
すると、携帯の通知音が聞こえた。
……お母さんからだ。
『了解!明日は課題テストもあるし早めに帰ってきてね。デート楽しんで~』
……お母さん……
最後は余計だけど、許可してくれて良かった。
そっか、明日は課題テストか。
入学式の前の説明会で英語、国語、数学の課題が配られた。
どれも中学の復習で、明日の課題テストの範囲。
応用問題が難しかったから帰ったら復習しないと。
お母さんにスタンプの返信をして携帯を鞄にしまった。
「おまたせ、絵奈」
「わっ。ありがとう、武尊!!」
片方の『スペシャル苺ホイップ』を受け取る。
生地の香ばしい匂いと苺の春の匂いがする。
「いたただきます!」と二人で言って、一口。
「美味しい~っ!」
クリームと苺、それから生地も美味しい。
生地はパリパリしてるし、いっぱい入ってる苺は甘酸っぱい。
クリームはふわふわしてる。
「絵奈、めっちゃ幸せそうに食べるやん。頬ゆるみまくってる」
「え、そ、そう?」
わわわっ、恥ずかしい、変なところ見られた。
懐かしいなあ。
こうやって放課後クレープ食べていつも笑ってたなあ。
「ほら、半分しよ」
「うん!」
こっちはクリームの代わりにチョコソース。
わあ、こっちも美味しい~!
苺とチョコが絡んでるの好きかも!!
「幸せだぁ……」
「あはは!絵奈甘いの好きやもんなぁ」
「大好き!!」
そういう武尊も幸せそうな顔してて……可愛い。
さっきよりふにゃってなってる。
「……そうや、明日課題テストあるやん?」
急に真顔になる武尊。
「うん」
「総合で負けた人が1位の人のクレープをおごるんどう?」
「えー。負ける気がするよ……」
「まだ何も始まってないのにめっちゃ弱気になるやん」
「だって、武尊小学生の時から頭良いじゃん」
「それは絵奈もやろ。賢いといえば紘夢やな。紘夢もあとで誘ってみる」
……紘夢、も。
気まずいな。
たぶん、いや絶対私がいるってなったら断る。
「……絵奈?」
「ふぇっ!?」
武尊が心配そうに私を見ていた。
「どしたん。めっちゃ固まってたけど、俺が引っ越してた時に紘夢となんかあったん?」
……す、するどい。
昔から武尊は何かと勘が鋭い。
ど、どうしよう、何て言おう。
気まずいこと知られたら武尊に絶対迷惑かける。
「う、ううん。中学になってずっとクラス離れちゃったから全然話せてなかっただけだよ」
「ああ、何やそうやったんか」
ごまかせた、かな。
それ以上武尊は何も紘夢のことを話題にせず、明日のテストや課題の話をしていた。
「絵奈、と、武尊……?」
すぐ近くに紘夢がいたことに私と武尊は気づかなかった。
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