第3話 帰り道に

「絵奈ー。一緒に帰ろうや」



ホームルームが終わると、武尊が後ろから私に話しかけてくれた。


「えっ、う、うん!」


実は武尊、私の席の後ろだったんだ。

全然気づかなかった。


「そや、紘夢も誘うか。同じクラスやろ」


「……あっ……」


鞄を持った瞬間固まってしまう。

視線を走らせると、紘夢はこちらを見ていた。

けど、すぐそらされ、教室を出てしまった。


「もう先に帰ったんか」


「き、きっとそうだよ!」


……武尊は今の見てなかったんだ。

それはそれで良かった、かも。


「じゃあ……二人きりやな」


「えっ」


武尊はニヤリと、ささやくような声で言う。

そ、その顔めちゃくちゃ怖いんですけど!?!?!?

てか、今の声何!?!?!?!?


「あはは、その反応かわいーなー」


言ってることは理解できないけど、いつもの武尊の声に戻った。

笑い方も昔と変わってない。

何だか嬉しくて思わず笑ってしまった。


「ほら、帰ろ」


「うん!」


嬉しいな。

また武尊と過ごせるの。

……本当に、良かった。



「はあ、疲れたなぁ」


通学路。

同級生らしき子たちも私たちの前を歩いている。


「今日入学式しかやってないで」


「そうだけどすごく緊張したもん」


「あ、クラス替え?」


「それとか」


「まあ、俺もクラス替えは緊張したわ」


「そうなの?」


「うん。小学校同じやった人とかおるかなって。そしたら自分の名前見つける前に絵奈と紘夢の名前見つけた」


「あはは!」


まあ、たしかに名前順的にはそうなるけど、思わず笑ってしまう。


「しかも同じクラスでさ。めっちゃ嬉しかったわ」


武尊、変わってないなぁ。

優しいし、面白いし。


「ん?どしたん、絵奈」


「ううん。やっぱり武尊は変わってないなって」


「うん、そやろ…って、どういうことや!」


「……ふふ」


私がからかって笑っても武尊は笑ってくれた。


「そーいう絵奈はめっちゃ変わったよな」


「……へっ?」


「うん。めっちゃ可愛くなった」


「……私、可愛くないよ?」


「えー……」


なぜか不満げな武尊。


「絵奈と出席番号隣で席近いわ思ったら一瞬誰か分からんかった」


「そ、そうなの?それは久しぶりだからじゃない?」


私が可愛いなんてありえない。

武尊は優しいからお世辞だ。


「……いや、それもあるけど……」


何でそんなに不満そうなんだろう。


「そや、久しぶりにあのクレープ屋行こうや!」


「あのクレープ屋って、『からふる☆クレープ』?」


「そう!あっこ引っ越してからずっと行きたかってん」


……行きたい。

ずっと行きたいって思ってた。

小さい時よく3人で行ってたなぁ。


「うん!行こう!お母さんに一応連絡してみる!」


私が答えると武尊は嬉しそうに微笑んでくれた。


「何なら連絡先交換しよーや」


武尊が優しく微笑みながら言う。

そういえばしてなかった。


「うん!」

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