第27話 散歩
「本当に荒れたままね」
目覚めてから初めて地上に出たアメリアは、瓦礫が散乱した景色を見回している。
ずっと眠ったままだったアメリアの反応からして、地上は何十年も変わらず、荒廃したままなんだろう。
「こんな景色を見てて、楽しいものなの?」
散歩がしたい。と提案してきた本人に何気なく聞いてみた。
ずっと地下にいた俺には、地上の荒れた景色も新鮮に感じていたけど、アメリアは違う。カプセルの中で眠る前から、この荒れた景色を知っているはずだ。それを見たところで、興味を引くものがあると思えない。
「見慣れた瓦礫の山なんて見ても、楽しくないわよ」
当然のように言葉を返された。
「じゃあ何で散歩がしたいなんて言ったの?」
「そうねぇ…景色が見たかったのじゃなくて、皆と歩きたかったからよ」
「どういうこと?」
皆と歩く?それだけ?
「一人でいるよりも、皆と何かしていた方が楽しい物よ。ずっと一人でいると、自分の事しか考えられなくなると思うの」
前を歩くオスカーの背中を見つめながら、含みを持たせるように言葉を続ける。
「誰かと一緒にいる。という事が、必要だと思ったの」
オスカーのことを言っているのだろうか?確かに、施設での口ぶりからしても、オスカーは一人で過ごしてきたのだろう。それが今では、三人で行動をしている。
これが必要…か。
「よく分かんないや」
アメリアの意図することまでは理解できなかったので、とりあえず曖昧に答えた。
「だけど。皆と一緒が楽しいのは、分かるかも」
そこは素直に答えた。俺の言葉に「そうよね」とアメリアは笑顔で返す。
そんなやり取りをしている最中。前方から何かが倒れるような音が聞こえてきた。
互いに横並びのまま、顔だけを合わせて会話していた俺とアメリアは、音のした方に顔を向ける。すると、前を歩いていたオスカーの姿がなかった。
正しくは、歩く姿はない。代わりに、うつ伏せの状態で倒れる、オスカーの姿があった。
「ちょっ⁉」
「オスカー⁉」
俺たちは、慌てて倒れるオスカーの下に駆け寄る。
「オスカー、どうしたの?」
直ぐに駆け寄り、アメリアは、心配そうに問いかける。
急なことで動揺が隠せない。それは俺もアメリアも同じようで、心配そうな感情が、アメリアの表情にも表れている。
うつ伏せのオスカーを、仰向けの状態にすると、オスカーは無表情のまま答えた。
「力が入らない」
「なんで急に…」
さっきまで、身体に不調な様子は見られなかった。それにも関わらず、急に倒れて、力が入らないという。
オスカーの身に、何が起きているのか分からず、二人で狼狽していると、オスカーのお腹から(ぐぅ~)という音が響いた。
「「えっ⁉」」
アメリアと二人で、驚いた顔を見合わせながら、音の正体と、オスカーに起きている状態に、理解が追いついた。
「お腹…空いたの?」
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