第31話 新たな遭遇②

 「あれも進人種サクリファイス…元々人間だった、終末暦の当事者よ」


 終末暦の当事者?


 「それは、試作型のせいなんじゃ…」


 「違うわ。第一世代ファーストタイプが暴走して、試作型プロトタイプが施設から逃げ出しただけに過ぎないわ。地上を支配していたのは、第一世代よ」


 「それじゃあ、他にも大量に?」


 「それはどうかしら?第一世代は、過去にオスカー達が戦っていた相手だもの。数はかなり減っているはずよ」


 試作型だけじゃない。第一世代と呼ばれる進人種サクリファイスそれが過去に、オスカーが殺したという話しに繋がるのだろうか?


 俺が考え込んでいる間にも、オスカーと第一世代の戦闘は続いている。


 「オスカーは大丈夫なの?」


 試作型と比べ長引いている戦闘。一方的に瓦礫を投げつける第一世代に対して、爪での攻撃手段しかないオスカーは、不利なように思えた。


 「大丈夫よ。今でもオスカーは生きているんだから」


 過去に戦っていたという話しからして、第一世代と何度も戦い、今も生きているという事は、何度も倒してきたと言いたいのだろう。


 アメリアから、心配しているような素振りは見られない。


 オスカーに視線を移すと、やはり、何度も飛んでくる瓦礫を避けているだけだ。だけど、避けながらも少しづつ距離を縮めていたようだ。


 跳躍を繰り返しながらも距離を詰めていき、今では、数歩踏み込めば、懐に入り込めるほどまで近づいていた。


 第一世代は、瓦礫を掴むのを止めて、長い右腕をがむしゃらに振り回して、オスカーを近づけないようにしている。


 何度も腕を鞭のようにしならせていたが、オスカーはそれを変形させた片手で掴み、もう片方の爪で引き裂いた。


 第一世代は、悲鳴のような雄叫びを挙げた後、バランスを崩してよろけている。


 その隙に、オスカーはさらに踏み込み、第一世代の胸元に腕を伸ばして爪を食い込ませた。


 肉を抉る音とともに、オスカーの腕は胸を貫通した。雄叫びを挙げていた第一世代は、既に動くことはなく、残された太い左腕も、力なくぶら下がっている。


 腕を引き抜き、鈍い音を立てて倒れる第一世代。


 これが、過去にオスカー達がやっていた事。


 俺の知らないオスカーの過去。


 進人種を殺す、感情を失くした進人種。


 優しく笑うと言っていたのが信じられないほど、無表情のその男は、今もなお、表情が変わる事なく、既に事切れた第一世代を見下ろしていた。

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