第32話 新たな遭遇③

 元々人間だった進人種サクリファイス


 終末暦の当事者、第一世代ファーストタイプ


 そして、その第一世代を殺す、終末暦を終わらせるという、感情を失くした進人種のオスカー。


 俺は、彼らの事を、未だに知らない。


 「お疲れ様。オスカー」


 第一世代を見下ろしているオスカーに、戦いを一緒に見守っていたアメリアが、近づきながら労いの言葉をかける。


 俺もアメリアについて行き、既に事切れた第一世代を確認する。


 右腕は千切れ、胸は抉られて空洞になっている。胴体程の太さのある左腕は残っているが、もはや動く気配はない。


 歪な姿をしているが、それ以外の身体の部位は人間と変わらない。


 人間の二本の脚と、もう生気を感じられない顔をした頭。だからこそ、両腕の異質さをより醸し出している。


 「見ない方がいい」


 横たわる第一世代を観察している俺に、オスカーは穏やかに言葉を発する。


 先ほどまでの戦いの疲労を感じさせない佇まいで、気遣うように促す。


 確かに、両腕以外は人間と変わらない姿の死体を見るのは、気分のいいものではない。


 言われるがまま、横たわる第一世代から目を逸らして、オスカー達に向き直る。


 「生き残りよね?」


 「そうだね。増える事はないから、そのはずだよ」


 第一世代について知っている二人は、当然のように言葉を紡ぎあっていく。


 「私も、第一世代との戦いは初めて見たわ」


 「見苦しい物を見せてしまったね」


 「そんな事ないわ、ずっとあなた達に、こんな事を背負わせてきたのね」


 「これが僕たちの役割だったからね。気にしないでくれ」


 話しながら、後ろめたい雰囲気を醸し出すアメリアに、優しく気遣う。


 「施設に戻ろうか。今後の事で話がある」


 オスカーは、こちらを一瞥し、未だに危険が潜んでいるかもしれない事を警戒して、地下施設に戻る事を提案した。


 今後について、落ち着いて話しをする必要がある。という事だろうか?


 第一世代との戦いを見た後だからか、散歩をしたいと提案したアメリアも、異論を称える事はしなかった。


 そうして俺たちは、地上の脅威から身を隠し、今後について話しがあるというオスカーに続くようにして、地下施設に戻った。

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