第33話 片鱗
「ちょうど机が片付いているから座って話そう」
地下施設に戻り、机の側にある椅子に腰掛けながら、オスカーは俺たちを招く。
机の上にあった荷物は、アメリアの着る物を探す際に片付けたので部屋の隅に積み上げられている。
机を挟んで、オスカーと向かい合うように、俺とアメリアは横に並んで椅子に腰かけた。
「担当直入に言うと、これからコロニーを探そうと思う」
何もない机の上で両手を組んで、今後の方針について話し始める。
「どうして急に?」
アメリアは、膝に手を置いたまま、提案に対して疑問を呈する。
「さっき見ていただろう?地上には、
「えっ⁉」
それってつまり。
「ルカを置いて行く。って言いたいのね」
提案の理由が、俺に向けられた事に驚きの声をあげると、すかさずアメリアが、言葉の真意を汲み取る。
オスカーは言葉を発さないが、沈黙が肯定を表しているように感じ取れた。
「私は賛成できかねるわ」
沈黙しているオスカーに、アメリアは躊躇なく否定の意を称えた。
「……何故だい?」
返答が意外だったのか、少し間を空けて理由を促した。
「コロニーなんて、簡単に見つかる物じゃないわ。当てもなく探すなんて、それこそ危険じゃない。それに何よりも、一人だけ置いて行くなんて可哀想よ」
アメリアの発言に対して、考え込む素振りを見せながら言葉を返す。
「言いたい事は分かる。だけど、ルカの安全が優先だ」
アメリアの言い分に理解を示しながらも、オスカーも意見を譲らない。
「それじゃあ、本人の意思を尊重するって事でどうかしら?」
アメリアは、こちらを一瞥すると、意見を求めるように、黙って言葉を待っている。
「そういう訳にはいかない」
アメリアの提案に割って入り、オスカーは自分の意見を押し通そうとする。
「地上は危険なんだ。わざわざ危険な場所に連れ出すべきじゃない」
あれ? またしても、何かオスカーに対して違和感を感じた。
「これまで通り、守ってあげればいいのよ」
「だから、さっき見ていただろう。第一世代が相手なら、守りきれる保証がない」
そうか…この違和感…。
以前感じた違和感。それは、地下施設を出る前に、アメリアに対して呆れたような雰囲気を醸し出していた。そして今は、不安や焦り、苛立ちのような雰囲気を感じる。
オスカーから、感情の片鱗を感じ取れる。
「ねぇ、オスカー」
互いに譲らない意見を言い合う二人に、割って入るように声をかけた。
「なんだい?」
こちらに顔を向けて言葉を待つオスカーに、何気ない疑問を投げかける。
「少し、感情的だね」
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