第23話 過去での出会い②

 「もう大丈夫だよ。恐くなかったかい?」


 「あっ・・ありがとうございます」


 助けてくれた恩人にお礼を言う。


 「ありがとう」


 隣りのミアも、困惑しながらもお礼の言葉を述べる。


 「どういたしまして」


 恩人は、無事を確認して、お礼の言葉を素直に受け入れると、顔を建物の方に向けた。


 「デイビット、そっちは仕留めたか?」


 建物の方に向けて声を発する。どうやらもう一人いるようだ。


 「あぁ、余裕で仕留めたぞ」


 建物の反対側から、やさぐれたような男の声が聞こえてきた。


 「ガキ共は無事か?」


 「心配ない、二人共無事だ」


 建物を隔てたまま会話をする二人。反対側にいた試作型プロトタイプは、『デイビット』という人が相手をしていたようだ。


 「そんじゃ、戻るとするかねぇ」


 建物の裏から、気だるそうに喋りながら姿を現した男。


 男性にしては、長めの髪を後ろに撫でつけたような髪型で、睨んでいる訳ではないのに、鋭い眼光をした男。おそらく、この人がデイビットという人だろう。


 「おいおい、この子達を置いていくのか?」


 「んな事言ってねぇだろ。まだ説明してなかったのか?」


 軽々しい口調でやり取りをしている二人は、こちらに向き直り、軽い自己紹介をして、とある提案をしてきた。


 「私達を、地下に?」


 「居住区という訳じゃないけど、地上にいるよりは安全だよ」


 こちらとしては、願ってもない提案だ。探していた地下の受け入れ先を提供してくれるというのだ。


 「是非、お願いします」


 すぐに返事をすると「了解」と言ってオスカーは微笑んだ。


 「良かったなぁチビ共、ちゃんと生きて借りは返せよ」


 悪戯っぽくデイビットは、口角を上げて話してくる。


 「子供に何させる気だ?」


 「そうゆう意味じゃねえ」


 普段から、軽口をたたき合っているような雰囲気で会話をする二人。

 

 優しく微笑むオスカーと比べ、デイビットは、粗雑な態度と言葉遣いをしているが、雰囲気から悪意は感じられない。


 二人は仲がいいのだろうか?


 「因みに、一匹請け負ってやったから、貸し一な」


 「一匹づつ相手したんだから、貸し借り無しだろ」


 軽口をたたき合う二人について行き、私達は地下施設に保護された。


 その後、オスカー達と顔を合わせる機会には恵まれなかったけど、施設の人達から、彼等の近況を聞く事が出来た。


 地上を取り戻す為に、オスカーが隊長として、部隊を率いて戦い続けている事。


 一か所に留まらず、各地を転々としている事。


 聞いているだけでも忙しそうだったので、私が一方的に覚えていて、オスカーに忘れられていたのは、仕方ないのかもしれない。


 地下の研究施設に保護されてから、お手伝いをしながら過ごして、私に適正があると言われ、進人種サクリファイスになった後も、オスカー達の活躍を聞くのが、日課のようなものだった。


 だけど、そんな毎日も『あの話しを聞いて』終わりを迎えた。


 オスカーの率いる部隊が、壊滅したという話しだ。


 

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