第25話 情報交換②

 アメリアの最後の質問「部隊の人達はもう、あなたしか残っていないの?」その質問を問われたオスカーは、無表情のまま答える。


 「僕の知る限り、当時生き残ったのは、他に二人だけだよ。その後にどうなったかは知らない」


 おそらく、大勢いたという進人種サクリファイスのことだろう。


 「デイビットは?」


 「アイツも知っているのか」


 オスカーは、少し驚いたような反応をしていた。『デイビット』初めて聞く名前だ。その人も進人種なのだろうか?


 「顔と名前を知っているのは、あなたとデイビットだけよ」


 「そうか。デイビットは生き残っていたよ。一緒に戦ってくれた」


 アメリアが言っていた、進人種たちを殺したという話し。デイビットという人も、それに協力していた。ということなのか?


 「まだ会えていないのね」


 「僕は、しばらく施設に籠っている時期があったからね。その間に、何をしていたのかは分からない」


 「会いたい?」


 真剣な眼差しで見つめるアメリア。それに対し、目を逸らしてオスカーは答える。


 「会いたい・・・のかな?でも、生きていて欲しいと思うよ」


 伏し目がちに、少し曖昧な感じで答えるオスカー。その返答に「そう」とだけ返してアメリアは言葉を繋ぐ。


 「ありがとう。答えてくれて」


 構わない。というように「あぁ」と淡泊な返事をする。話しは終わったようだ。


 「ところで、これからどうするの?」


 俺は、話しが終わったのを見計らって、今後について聞いてみる。


 「どうしようか?」


 まさかの質問を質問で返された。でもそうだろう、アメリアから、思ったより情報を聞き出せなかったようだから、オスカーの、終末暦を終わらせる。という目的にも、影響が出ているのかもしれない。


 「じゃあ提案」


 明るいトーンでアメリアは、手を挙げて話しに割り込んできた。


 「私、地上を散歩したい」


 あまりにも呑気な提案だった。


 「地上は昔よりも荒れているよ。それに、危険な場所なのは知っているだろう?」


 吞気な提案に対して、まともな返答をするオスカー。なんだか温度差が激しい。


 「このまま施設にいてもしょうがないじゃない。それに、危険でもオスカーなら助けてくれるでしょう?」


 最後だけ少し真剣な雰囲気で話すアメリアに、少し間をおいて返答をする。


 「…それもそうだね」


 俺に、一瞬視線を移して、少し呆れたような雰囲気を醸しながら、吞気な提案を受け入れた。


 この時、少し違和感を感じた。だけど、その違和感が何なのかは、自分でもはっきりしなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る