第15話 地下施設

 扉を隠すように積もっている瓦礫を、オスカーが変形させた爪で砕きながらどかしていく。


 危ないから少し離れていろと言われたので、俺は瓦礫の山から少し距離をとって、少しずつ扉が露わになっていく様を眺めている。


 「すごい力だなぁ」


 瓦礫を砕いているといっても、その破片は俺の身体くらいの大きさがある。それを、オスカーは片手で押しのけるようにどかしていく。


 俺なら両手で押しても倒すので精一杯だろう。それだけ、進人種サクリファイスであるオスカーの腕力は凄まじい。


 しばらくして、瓦礫を撤去したオスカーは、地面の穴をふさぐ蓋のような扉を開けて、中を覗き込んでいた。


 覗き込んでいるのは、安全確認だろう。中を確認し終えたオスカーは、こちらに向かって手招きをした。


 どうやら中は、問題ないようだ。


 手招きに応じて扉の下に向かうと、先に入るように促された。試作型プロトタイプが入り込まないように、扉を閉めてから進むらしい。


 地下への入口は、すぐに階段がありその奥は真っ暗で何も見えない。


 「壁のボタンを押してごらん。明かりがつくはずだ」


 俺の後ろで、扉を頭上に持ち上げるように支えているオスカーが指示をだす。


 扉を閉めると真っ暗になるので、扉を閉じずに待ってくれている。


 すぐ近くの壁を見てみると、目の前に壁に張り付いているような板があった。これがボタンだろうか?


 オスカーに言われるまま、ボタンらしきものを押してみると。


 真っ暗な空間が何度か点滅した後に、明るく照らされた。


 「これが電気だよ」


 扉を閉めながら、オスカーが言った。


 地上にあった、風力発電というものから供給される電気で明かりがつくらしい。電気のおかげで、真っ暗で見えなかった、階段の先まで照らされている。


 これが終末暦が訪れる前からあった文明か。興味深い。


 オスカーが先頭を歩き、その後を俺がついていく。


 真っすぐの階段をしばらく降りていくと、平らな床の通路に出てきた。その通路の先の壁には、また扉があった。


 「これは、エレベーターだな」


 「何それ?」


 扉の反対側に部屋があって、その部屋が上下に移動して人や物を運べるらしい。


 「故障しているみたいだな」


 扉の近くにあるボタンを押したり確認しながらオスカーが呟く。


 「これ以上先に行けないの?」


 ここまで来てそれは困る。不安な想いを抱きつつオスカーに聞くと、扉を力づくでこじ開けはじめた。


 ガリガリと削れるような音をあげながら、扉がこじ開けられていく。


 オスカーって時々大胆だなぁ。


 こじ開けられた扉の先には、ロープのような物がだらしなく垂れていた。


 「下に落ちてしまったのか」と言いながらオスカーは下を眺めている。


 どうやら、エレベーターの中にあるはずの部屋が落下したまま戻ってこないらしい。


 このまま引き返すのかと俺が考えていると。


 「さっき言っていた抱っこを今してあげよう」


 ・・・はい?


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