第10話 終末暦
「終末暦を、終わらせたいと思ってるんだ」
聞いたことのない単語が飛び出してきた。
終末暦とは何か?
オスカー曰く、地上から人間がいなくなり、コロニーに身を隠して生きることを余儀なくされ、文明が発展することなく、生命が滅びるまで、時間だけが過ぎていくことになってしまった、今の世界。
それを、【終末暦】と地上を追われた人間たちが、終末までのカウントを数えるように、そう呼び始めたらしい。
人間が地上で暮らしていた頃、それまでは、西暦という呼び方をしていたようだ。それが、度重なる災害、そうして起きた天変地異。
その後、築き上げた文明のほとんどが崩壊し、人間を含むほぼ全ての生命体が、環境の変化についていけず、次々と命を落としていく中で行われた、進人種を生み出す、実験と研究。
それが失敗に終わり、地下に逃げて、ただ生きことに注力せざるをえないこの世界。
いつしか西暦という呼び方をやめて、終末までの年月を数えるだけの終末暦。
それを、終わらせる?
そんなことができるのだろうか?
人間たちがいなくなれば、終末を迎えることになり、終末暦が終わるだろう。だけど、人間である俺を助けてくれた以上、そういう意味ではないはず。
だったら、オスカーの言う、終末暦を終わらせるというのは、地上に蔓延る試作型を排除して、人間たちが地上に戻り、かつてのような文明を築いていくことを言っているのだろう。
それをオスカーは、望んでいる?
「そんなこと・・・できるの?」
単純な疑問だ。俺が生まれるよりも前から、オスカーのいう終末暦は続いている。
12年以上も前からだ、オスカーが、いつからそんなことを思って地上で活動してきたか分からない。だけど、俺は、ずっと地下で過ごしてきて、地上に出てきてすぐに試作型に襲われた。
運が悪かっただけかもしれないけど、試作型が繫殖を繰り返しているなら、その数は計り知れないほどだろう。
「出来るか出来ないかじゃない、これは、僕がやるべき事なんだ」
無表情ながら、どことなく後ろめたさを感じさせるように、伏し目がちにオスカーは言い放った。
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