第11話 目的地
オスカーと話しをしながら地上を移動していると、
離れたところで見ていても分かるほど、オスカーは試作型との戦いに慣れている。
腕を変形させたまま近づいて、注意を引き付けてから一定の間合いをとって、跳躍をして襲いかかる試作型を、躱しざま変形させた爪で切り裂く。大抵の場合、これで決着がつく。
ずっと、こんなことを繰り返してきたのだろうか?
「僕がやるべき事」オスカーは、そう言っていた。
終末暦を終わらせるため、一人で地上の試作型と戦い続けている。
オスカーが、17歳で
40年以上も一人で戦い続けているのだろうか?
だからといって、時間の流れる感覚まで変わる訳ではないだろう。
長い間、一人で戦い続けてまでやるべき事、なぜ伏し目がちにそう言ったのだろうか?
無表情なのになぜか、悲しそうな雰囲気を感じた。だから俺は、そこで質問を止めてしまった。
オスカーが進人種になったことと、何か関係がある、直感的にそう思った。それと同時に、無遠慮に踏み込んではいけないと、無意識に悟ってしまった。
試作型との遭遇と戦闘を繰り返しながらも地上を歩き続け、休めそうな場所を見つけた。今日はそこで、睡眠をとるようだ。
進人種は、食事だけでなく睡眠も必要なく、ただ休息をとるだけで、体力や疲労も回復するらしい。オスカー的には、全く疲労はないようだが、人間の俺に合わせて休息をとってくれるようだ。確かに、ずっと歩き続けているので疲労が溜まっている。
「子守唄は必要かい?」
「そんなに子供じゃない」
時々、優しさなのか馬鹿にしてるのか、判断に困ることを口走る。無表情だから本当に分からない。
子守唄は不要だけど、まだ少し、話しをしたい気分だった。
「眠る前に、話しを聞いてもいい?」
「三匹のこぶたの話しとか?」
何それ?気になるけど今はいいや。
「これからどこに向かうとか」
そっちか、という感じに改めて考える素振りを見せてからオスカーは、話しを続けた。
「目的地はあるよ、僕たちが向かっているのはそこだ」
「そこになにがあるの?」
「何があるというよりも、残っていれば、同行者が増えるって感じかな?」
同行者が増える?オスカーの仲間だろうか?
「どんな人なの?」
「僕も、会った事はないんだ」
知らない人なのか?でも、オスカー以外の人と会うのはちょっと楽しみかも。
「因みに、その人も進人種だよ」
「えっ⁉」
オスカー以外にも進人種がいる?
冷静に考えればそうだ。オスカーが進人種なのは、自分から言っていた。だけど、自分だけだとは言っていなかった。
「オスカーの他にも進人種はいるの?」
「・・・あぁ、他にも・・大勢いたよ・・・」
大勢いた?過去形で放たれた言葉に疑問が残った。だけど、その言葉を発する時、またしても、何か後ろめたいような雰囲気を漂わせていた。
「そう・・・なんだ」
やはり、終末暦とオスカーが進人種であること。そして、オスカーの見せる後ろめたさの原因は、関係あるのだろう。
だけど、質問を続けるのを止めてしまう。
なぜだろう?感情を読み取れないはずの無表情のオスカーが、とても悲しそうに感じるのは。
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