概要
額にあった不思議な宝石を奪われた姫は、木偶人形の様になってしまった。
その世話係を任された身分外(人以下)の扱いを受ける名の無い少女「わたし」は、毎夜サンパギータに物語を聞かせて慈しんだ。
ある夜、語り部を名乗る麗しい男が宮殿に現れた事により、サンパギータの額にあった宝石を景品に物語の「語り比べ」が始まった。
巧みに語る語り部に対し、最初の勝負に立ち上がったのは「わたし」の物語を記憶していたサンパギータだった。
熱帯の湖上の宮殿で、宝石の様な物語の数々が夜毎語られていく。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!心の芯が痺れる。行かないで、って。
どこからどう、この作品についておはなしすれば良いのか。
読了から少し時間が経っているのに、いまだざわついています。
こころが、頭の芯が。
芳醇、という表現をわたしは向けたいのですが、そうした丁寧で緻密で、文字の間から熱帯の森林と水辺の匂いを感じるような描写を、本作をひもといた読者の方はしばらく楽しむことになるでしょう。わたしもそうでした。とある方のお勧めを受けて読み始め、ああ、なんて心地よいことばたちなんだろうと、しばらく作者さまがご用意くださった世界に揺れて、楽しんでいたのです。
主人公の幸福とはいえない現在の状況、辛かった過去を想起させることがらに触れて、同情もします。あるいはそ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!タイトルの意味を知る時、胸に満ちるのは光です。
他に類を見ない、突出して美しい愛の物語です。
ああ、読み終わりたくなかったなぁ。
でも、読みたかった。もう我慢ができなくて読み切ってしまいました。
ここは湖上に佇む美しい宮殿。
額の宝玉を奪われた美しき少女は、かつては女神の化身とも崇められたというのに、王妃の妬心と王の愚かさから宝玉を奪われ、その心まで見失ってしまう事となりました。
その少女に寄り添うのは、人とも扱われぬ、名ももたない少女です。
虐げられる彼女らと、その前に舞い降りるかの如く現れた一人の美しき物語の語り手。
この物語は、物語を語ることによって、季節の移ろいの中、真実が少しずつ丸裸にされてゆく物語なのです。
この物語は…続きを読む - ★★★ Excellent!!!それぞれ「物語」が複雑に絡まり、少し悲しくとても幸せな結末へ導かれる
美しい水上宮殿。
そこには、木偶人形のようになってしまった美しい姫・サンパギータと、彼女のお世話をする少女がいました。
宮殿の人々から疎まれる2人でしたが、彼女たちの運命は、その宮殿へ「語り部」を名乗る青年がやってきたことにより、大きく変わっていきます。
素晴らしい物語でした。
特に、それぞれの抱える背景、物語が、運命的に絡まりあってひとつの結末に収束していく終盤の展開は圧巻です。
それぞれ別のものとしてあった物語が、見事により合わさってひとつの物語を成していくところには、大きなカタルシスと感動があります。
サンパギータの正体、主人公の少女の正体、語り部・ロキラタの正体――彼らのパッと見…続きを読む - ★★★ Excellent!!!この美しくも辛く重々しい始まりで「めちゃくちゃハッピーエンド」って⁉︎
密林の奥深く、雨季になると湖に沈み、霧の中で湖面にその姿を映す幽玄な美しさを現す宮殿で夜毎繰り広げられる『語り比べ』を中心に進む物語です。
お話の筋は作品のあらすじを読んでいただくとして、とにかくこのお話がすごいのは霧に包まれた宮殿に漂う湿度や、不意に握られた手から伝わる熱、サンパギータの不思議な語り様まで、あらゆるシーンがくっきりはっきり脳裏に浮かんできてしまうのです。
さらには、語り部の青年ロキラタが愛を告げた時、語り手の名もなき侍女が一緒には行けない、心だけを持っていってほしいと告げた後の二人の会話——
「ここに居たがっている心を、どうやって持っていけばいいのです?」
「心…続きを読む - ★★★ Excellent!!!名もなき語り手の物語を広めましょう
星々が水面に映り、夜風が花の香を漂わせる異国情緒あふれる水上宮殿を舞台にした物語です。
主人公は、人間以下の扱いを受ける名もなき奴隷の少女「わたし」。蔑まれ嘲られる日々に彼女が耐えられるのは、サンパギータという女神のような、けれど物言わぬ人形の姫に仕えているから。ひとりでは食事もできないサンパギータに甲斐甲斐しく傅きながら、「わたし」は夜ごと物語を紡ぎます。どうして知っているのか、彼女自身も覚えていない多彩で美しく面白く、時に悲しい物語の数々を。水上宮殿に語り手の青年が現れた時、サンパギータの中に降り積もった「わたし」の物語は花開きます。その花の色は形は、種はどこからやってきたのか──…続きを読む