わたしのサンパギータがいってしまう【完結済】
梨鳥 ふるり
序章
水上宮殿で起こった不思議なお話
密林に生い茂る葉から零れた
周囲を囲うマングローブ林に習い、
宮殿の建つ一帯は、大量の雨で水没し湖となるのです。
すると宮殿は、水上に浮かぶ真っ当な姿となり、水面から絶えず立ちこめる濃い霧の中、水鏡に自身の
特に、レェスを模した板の柵の
もっとも、雨期の湖は広く深く、この神秘的で美しい姿が人目に触れる事は、
この神秘の宮殿の
マハラジャはこの不便な土地を
ラアヒットヒャ様は美しく珍しい宮殿に満足し、お妃様を
お妃様は、変化が厳しい熱帯湿地の土地に慣れなかったのでしょう、なかなか子を授かる事が出来ずに心を痛める日々が続いておりました。
それを見かねたラアヒットヒャ様は、子を授けてくれるよう神へ祈りました。
するとある晩、雨期の過ぎた湖上の宮殿へ、
黄金と見紛う小麦色の小さな身体を、金とも銀ともとれる光を波打たせた髪で
ラアヒットヒャ様はすぐにこの幼子を神から贈られた我が子と決め、サンパギータ姫と名付けました。かつて、この国を訪れた異国の使者が、
結果、シヴァンシカ妃にとって、この名は酷く苦いものとなったのでございます。
シヴァンシカ妃は、自身では子を産めぬと神に
しかし、サンパギータ姫の名を呼ぶ事も、お世話をする事も一切なさいませんでした。
微笑みかける事すら、なさらなかったのです。そしてあろう事か、額を飾っていた宝石を強引に奪ってしまわれました。
宝石は額の一部だった様で、サンパギータ姫は額から血を噴き出して悲鳴を上げ、床に倒れてしまいました。そして、それからというもの、サンパギータ姫は
この事で、シヴァンシカ妃の心はさらに幼子から遠く離れていきました。
そしてそのまま不幸な一年が過ぎた頃、妃はお腹に念願の子を宿しました。
生まれた赤ん坊は美しい女の子で、ファティマ姫と名付けられました。
それからのサンパギータ姫の十年は想像も
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