第6話 ルールを破ったら相手の言うことを何でも一つ聞くこと

 翌日の午前7時半、いつもより早く起きて学校に登校した。なぜ早く行くのか……それは立川と行く時間をズラすため。


 朝に弱いらしい立川は、後で朝に強い俺が早く家を出ることを昨夜決めた。


 午前8時、朝早くに起きて学校に来ていたので眠たかった。なので皆が登校するまでの時間、教室で机に突っ伏して寝ることにする。


 ───10分後。


 そろそろクラスメイトが登校してくる頃だろうと思い、起きて顔をあげると目の前にはこちらを見ていた美奈さん……いや、ここでは立川さんか……立川さんがなにも言わずこちらをじっと見ていた。すると彼女は、口を開いた。


「おはよう、朝井くん。今日も眠たそうね」


 まぁ、さっきまで寝てたからね。

 で、この後どうせまた聞くんだろ?

 『誰にも言ってないでしょうね?』とかなんとか。もう聞き飽きた……。

 まるで同じ時をループしているようだ。

 とりあえず挨拶を返しておこう。


「おは」


「挨拶、雑すぎない?」


「そうか?……じゃあ、文句を言われたのでもう一度言うことにするよ」


「いや、もういいよ。言われて言う人の挨拶なんて聞きたくない」


 なら、もう挨拶も声をかけてくるのもやめてくれ。立川が声をかけてくる度に痛い視線が来るから。今だってそうだ……『またあの2人、話してるよ。やっば付き合ってんじゃね』とかコソコソ言われてるし。


「それよりさ朝井くん──」


「「誰にも言ってないでしょうね?」」


「えっ……?」


 立川は、自分が言った言葉が誰かと重なり混乱していた。その様子を見て俺は、心の中で笑った。ほら、やっぱり……聞くと思ってた。


「それ、口癖になるよ」


 ニヤニヤしながらそう言うと立川が両手で俺の頬をつねってきた。


「朝井くんが言ったのね!? 私のマネして面白い?」


 あぁ、面白いさ。立川の素がどんどん暴かれるからな……なんて言ったら睨まれそうだ。


 それよりさっきの誰にも言ってないの問いは、立川の秘密か、家族になったことか……一体どちらのことを聞いてきたのだろうか。


 立川は、俺の頬から手を離し、はぁ~と深いため息をつく。


「何度も言ってるけど俺は、誰にも言っていない。てか、そんなに聞かれると逆に誰かに言ってほしいように聞こえてくるんだけど」


 何度も言われると逆に言ってほしいと立川が俺にお願いしているようだ。


 何かに気が付いた彼女はイスから立ち上がり机に片手を置き、体重をかけてこちらを見てきた。


「友達に呼ばれたから行くね。君、私がいないところでルール破らないでね」


「もし、破ったらどうなるんだ?」


 俺がそう聞くと彼女は手を腰に当て、ん~と考える。そして数秒後、彼女は、ニコッと笑い口を開いた。


「相手の言うことを何でも一つ聞くのはどう?」


「うん、いいと思う。それぐらいのペナルティじゃないといつでもルールを破れるもんな」


「じゃ、決まり」


 両手を合わせ笑った彼女は俺に背を向け友達の元へ行った。立川と入れ違いで俺のところへ友人である片山が来た。


「いつも立川と何を話してるんだ?」


「んー、別に大したことは話してないよ。今日の課題なんだっけ? みたいな会話しかしてない。片山が思ってるような会話は一切してない」


「そうか……ところで再婚したんだろ? どうなんだ?」


 片山は、周りに聞こえないぐらいの声量で聞いてきた。


「相手の人もいい人そうだし、娘さんとも上手くやれそうだよ」


「娘さん? もしや妹が……」


「あぁ、義妹な」


「おぉ、ちょっと気になるな。どんな子なんだ?」


「そうだな……ちょっとめんどくさいがいい人だよ」

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