第14話 一緒にお昼食べない?
「えっ、じゃあ、お前が言ってた妹って立川のことなのか?」
「あぁ、そうだ。言おうとしてたんだが中々言えなくてな」
週の始めのお昼休み、俺は、片山に再婚して立川さんと一緒の家に住んでいることを伝えた。
父さんと香帆さんが帰ってきて寝ようとした時に片山からのメッセージに気付いた。メールは、美奈さんがこの家に入っているところを見たという内容だった。
片山は、俺と別れて家から離れた後、自分が帰る方向とは逆の方から美奈さんが歩いてきているのを見かけたらしい。そしたら美奈さんが俺の家に入っていくところを偶然見かけたと……。
美奈さんとのルールの中に家族であることは誰にも言わないというものがあったが美奈さんと話し合った結果、言ってもいいんじゃないかとなった。そもそも隠す必要なかったのでは今さら思ったり……。
「まじかぁ……。で、家での立川ってどうなんだ?」
「どうって────」
俺が喋ろうとしたそのタイミングで前の席の立川は、後ろを振り返り話しかけてきた。
「朝井くん、一緒にお昼食べない?」
「「えっ……?」」
俺と片山は、同じタイミングで驚きそして互いに顔を見合わせた。立川が俺をお昼に誘ったことを盗み聞きしていたクラスメイトから痛い視線が来るがまぁ、今は無視だ。 立川からは、今さっき何言おうとしてた? と言いたげな目でこちらを見てきた。
「グループの子と食べないのか?」
「うん、今日は朝井くんと食べたいなって」
食べたいなって……いや、急に怖いな。何か企んでるんじゃないかと思ってしまうんだが。片山は、肘で俺の腕をつついてきて小声で話しかけてきた。
「オレ、一人で食堂行くからじゃあな」
教室から出ていこうとする弘輝をガシッと腕を掴む。
「俺は、立川とは食べるつもりはない」
立川の目の前でそう断言した瞬間立川は、顔を両手で隠して泣き出した。
「朝井くん、私のこと嫌いなの? 私はただ朝井くんと仲良くなるためにお昼に誘ったのに……」
「おい、何、泣かしてるんだよ」
片山が俺にそう言うが俺の中での答えは変わらない。なぜなら立川は、本当に泣いていないからだ。だが、状況は面倒なことになりつつある。教室で食べようとしているクラスメイトが何事かとこちらを見ている。周りから見ればこの状況はどうみても俺が立川を泣かしたとしか思わないだろう。
早急に立川をどうにかしなければ、明日から俺は、クラスメイトから立川を泣かした奴と噂される。
さて、どうしたもんかね……。
2人だけは、極力避けたい。2人っきりになんてなったら他の男子からどう思われるか……想像するだけで怖い。
「あー、立川……その、片山と一緒でもいいなら一緒食べてもいいんだけど……」
立川は、俺の言葉を聞いて顔をバッと挙げて両手でオレの手を握ってきた。
「ホントに!?」
「あぁ……」
いや、めっちゃ、笑顔じゃん……。
やっぱ泣くフリだったんだな。
「伊織~! 今日はこの4人で食べようよ」
こちらへやって来た中原さんに立川は、手招きする。
「おっ、誘えたんだ~。片山がいるのは何かあれだけどいいよ」
「何かって何だよ……で、どこで食べるんだ?」
教室で食べようとしたがすでに4人集まって食べれるようなスペースはなかった。クラスメイトのほとんどが教室で食べているのだからしょうがない。
「中庭しかなさそうだね。あんまり時間ないし、早く行こっ」
伊織を先頭に俺達4人は、お弁当を持って中庭へ移動した。
***
「で、朝井くん、美奈と一緒に住んでるみたいだけどどう?」
中原さんが弁当を食べている俺に尋ねてきた。立川がどれくらいの人に俺達の関係を言ったかは知らないがどうやら中原さんには伝えたようだ。
「どうって、特に何もないよ」
「ふ~ん……。そう言えばさ、美奈がなんで朝井くんをお昼に誘ったか知ってる?」
「ちょっと美奈!?」
中原さんの問いかけに俺は首を横に振ると立川がなぜか慌てていた。中原さんを止めようとしていた立川だが、中原さんは立川のことを無視して話を続ける。
「美奈、ここで言わないと後悔するよ。教室で言えないなら今ここで言わなきゃ」
「そ、そうだけど……」
「ほら、頑張って!」
俺と弘輝は、立川と中原さんの会話を聞いて顔を見合わせた。今から何を言われるのかと考えた。
告白じゃないよな……立川、俺のこと嫌いそうだし。
「あっ、朝井くん!」
言うことを決めたのか立川は、俺の名前を呼んだ。
「私とプラネタリウム観に行きませんか?」
「プラネタリウム?」
予想外の誘いに思わず聞き返した。なぜ俺と行きたいのかがまずわからない。行くなら友達である中原さんとかで行けばいいんじゃないか?
「美奈、朝井くんが何でオレなんだ? みたいな顔してるよ」
「あっ、急にごめんね。私、星見るのが趣味で誰か同じ趣味持ってる人がいれば一緒に最近出来た科学館でプラネタリウム見たいなって……朝井くん、星見るのが好きって入学した頃、自己紹介の時に言ってたからさ」
それで俺を……。
立川が星を見ることが好きなのは知らなかった。
誰も興味ないだろうと思い簡単に済ませた自己紹介を聞いてくれた人がいることに対して俺は、少し嬉しくなった。
「俺なんかで良ければ一緒に行こうか」
「いいの!?」
立川の表情がパッと明るくなった。
「あぁ……」
「良かったね、美奈。朝井くんとデートとの約束が────」
「「これはデートじゃない!!」」
俺と立川さんは、同じタイミングで中原さんの発言を否定するのだった。
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