第30話 水着、見たいんでしょ?
「やっぱりこの中だと美奈が一番可愛いよ」
「いや、これは可愛いじゃなくてエロいんだよ。スタイルいいし、絶対ナンパされるよ」
美奈さんの水着を見て友人である中原さんと大月さんは、言う。大月さんに関しては全く嬉しくない発言だ。美奈さんは、ニコニコと笑うが困っている様子だった。
そんな美奈さんを遠くから見ていた俺は隣にいる片山から話しかけられた。
「オレら本当に来て良かったのか?」
「さぁ……」
俺も今そう思っていたところだ。美奈さんや森とかの中に俺らが混ざっているのは違和感しかない。森なんかさっきからいろんな人に声をかけられている気がする。
夏休みが残すところ1週間となったその日、俺達は海に来ていた。海は、電車に乗って1時間弱で着いた。
「朝井、片山、みんなで水中バレーしようってなってるんだけどどうかな?」
森と長谷部は少し離れたところにいた俺と片山を誘ってきた。片山はどうすると目で聞いてきた。せっかく来たのだからぼっーとするよりはましだろうと思い俺と片山はやると返事した。
***
7人で水中バレーをやった後は、海の家でお昼を食べようとなった。片山といた俺だが、片山が飲み物を買ってくるといって自販機に行ったため俺は一人になった。俺も先に席取りに行った美奈さんや森達のところに行こうとしたが行っても気まずいと思い片山が戻ってくるのを待つことにした。
「あれ? 悠斗くん、何してるの?」
中々来ないので心配になってきた美奈さんは俺のところに来た。
「飲み物を買いに行った片山を待っているんだ」
「片山くん、そっか……」
納得して戻るかと思ったが美奈さんは俺の隣にいた。何か話したいことがあるのかと思ったが美奈さんが話しかけてくる様子もない。シーンとした状況が続き物凄く気まずい。俺が何か話した方がいいのだろうかと思い話しかけることにした。
「日焼け対策ってやつか?」
「えっ……?」
急な俺の質問に美奈さんは困惑する。
「いや、中原さんと大月さんはカーディガン来てないのに美奈さんだけ着てるから」
「あぁ、そういうこと……。つまり悠斗くんは私の水着が見たいと?」
「なんでそうなる」
見たいなんて一言も言っていないのに勝手に変な解釈をされた。
「買った時はそこまで気にならなかったんだけどいざ人前で着るとなるとあんまり見られたくないなって思ってカーディガンを羽織ってるの。まぁ、日焼け対策って意味もあるけど」
「そうか……」
「そうかって……ほ、本当に見たいとか思ってないわけ?」
「思ってない。さっき見られたくないって言ったのにその発言だと見てほしいに聞こえるんだが」
「べ、別に悠斗くんにだけは見てもらいたいなぁなんて思ってないから」
美奈さん、本音がだだ漏れですよ。
まぁ、さっきは、あぁ言ったが、見たくないと言えば嘘になる。 美奈さんがどんな水着を着ているかは気になるがここで見たいなんて言ったらヤバい奴になるから見たくないと言った。
「美奈さんがそんなに見せたいなら今ここで見せてもいいよ」
「なっ、何それ。私は、別に見せたいなんて一言も言ってない。まぁ……悠斗くんがどうしても見たいって言うなら見せてあげてもいいけど?」
何で上から目線なんだよ。
「いや、俺は別に見たくないからいいよ」
「むぅ~、悠斗くんは素直じゃないなぁ~。まぁ、私も見せたくないしいいんだけど」
美奈さんはそう言って長い髪を纏めだした。
「それ、ハーフアップっていうやつだっけ?」
「うん、お団子ハーフアップだよ。もしかして似合ってない?」
美奈さんは、肩からかけていたスマホショルダーから手鏡を取り出し、髪型を気にする。
「いや、いつもと雰囲気変わっていいと思うよ。正直に言うと美奈さんはどの髪型でも似合うと思うし、可愛いよ」
思ったことをストレートに言うと美奈さんの顔がみるみる赤くなっていった。
「しょ、正直に言わなくていい」
顔を見られたくないのか両手で顔を隠し、美奈さんは俺の前から立ち去っていった。
怒らせるようなことでも言ってしまったのだろうか。
***
片山が戻ってきて、全員が揃ったところで海の家で昼食をとることになった。カレーやオムライス、焼きそばなど皆、それぞれ違うものを食べていた。食べ終わった後、向かい側に座っていた中原さんが俺と片山の間に入ってきて話しかけてきた。
「おい、邪魔だから戻れよ」
「片山が邪魔なんだって。私は、朝井くんと話したいの。ほら、早くいったいった」
「行かねぇーよ」
2人が言い合いになっている時、俺は、さっきまで森と話していた美奈さんがいないことに気付いた。席を外し、海の方へ行くと木陰で座っている美奈さんを見つけた。
「もしかしてナンパ待ち?」
「何言ってるの? 私はただあの場にいるのがちょっとしんどくてここで休んでただけ。私さ、ほんとは、海に来るつもりなかったんだ」
「じゃあ、何で来たんだ?」
俺は、少し間を開けて美奈さんの隣に座った。
「付き合いが悪い奴って思われると思ったからよ。いつも適当な理由作って断ってるから……」
「中原さん達が嫌いだから?」
美奈さんが中原さん達を嫌いじゃないことは知っているが、美奈さんの本音を引き出すために俺は、そう尋ねた。
「それは違う。大切な友達だからこそ本当の自分を見せることが出来なくて、いつか私の嫌な部分を知ってしまうんじゃないかって思うと怖いの……。だから────」
「美奈さんは、今、楽しくない?」
「えっ……?」
「つまらないと思うなら帰ればいい。けど、ここに来て楽んでいるなら仮面なんて被らないで素直に楽しめばいいと俺は思う。中原さんや森ならどんな美奈さんでも受け入れてくれる。急に仮面被るのをやめろとは言わない。少しずつ本当の自分を表に出せばいい」
「本当の自分……。そんなことしたらめんどくさい女って思われて嫌われない?」
美奈さんは不安そうに俺に尋ねてきた。それにオレは首を横に振った。
「俺は美奈さんのそういうところ含めて好きだよ。だから大丈夫……」
俺は、立ち上がり美奈さんの目の前に手を差し出した。
「急にいなくなったらみんな心配するだろうしそろそろ戻らないか?」
「……そうね」
美奈さんはそっと俺の手を優しく握って立ち上がる。そしてお互い向き合ったところで美奈さんは、笑顔で言った。
「悠斗くん、ありがとね」
そうお礼を言った瞬間、美奈さんが着ていた?カーディガンが下へパサッと落ちた。
「「えっ……」」
美奈さんは慌てて下に落ちたカーディガンを拾い急いで着る。
「もしかして下に落ちて偶然俺が見るっていう事故が起きるようにわざとカーディガンを着ないで肩に乗せてた?」
「ち、違う……わよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます