第33話 二度目のデート
夏休み最終日、俺は、白井先輩と駅前で待ち合わせし、大型ショッピングモールの中にある映画館に行くことになった。2回目であったこともあり、この前かは緊張しなかった。
事前に決めていなかったため映画館に行ってどの映画を見ようかと先輩と相談する。
「朝井くん、どれ見たい?」
「俺は、どれでもいいです。先輩が見たいものを見ましょう」
「ん~、じゃあ、ホラーとこっち……どっちがいい?」
先輩が指差した作品は、かなり怖いと言われているホラー映画ともう一つは、恋愛映画だった。
「こっちがいいです」
すぐに俺はホラー映画の方を指差した。理由は簡単だ。この恋愛映画は先輩と見たら絶対に気まずくなる。昨日ネットで一通りやっている映画の内容を調べていたが……うん、ダメだな。
「怖いの大丈夫なの? 私は、全然見るの得意だけど」
「俺もホラー映画を見るのは大丈夫ですよ」
「朝井くんがそう言うなら大丈夫か。じゃ、これに決定ね」
見るのもが決まり座席指定をしてチケットを買った。その後は上映時間前にポップコーン1つとドリンクを2つ買った。ポップコーンは一人で食べるのには多いので先輩と俺で割り勘した。
上映時間が近づいてきたので、チケットに書かれた座席のところに二人並んで座った。先輩は俺と先輩の間にポップコーンを置いた。友達と隣同士で座っても何も気にならなかったが、隣が女子だと落ち着かない。
「美奈ちゃんとは映画とか見に行くの?」
上映時間まで少し時間があったので先輩は話しかけてきた。
「見に行ったことはありません。美奈さんと俺はそれぞれ違う友達がいますから彼女と出掛けることはないですね」
夏休みは帰省したり、海に行ったりと一緒に過ごすことは多かったが学校が始まればそんなに遊んだりはしないだろう。
「そう、なんだ………」
なぜかその時の先輩の表情は、ほっとしているように見えた。
***
映画を見終え、映画館から出た後は、先輩オススメの喫茶店に行って、お茶しながら映画の感想を言い合ったり、最近ハマっている本について話していた。その後は、自分の高校が今度、文化祭があるのでその話をしていた。
「えっ、文化祭!? 絶対行く、いつやるの? 朝井くんは何するの?」
急にテンションがあがった先輩は、次々に質問していく。
「日にちは、9月9日と10日です。2学期が始まってから決めるので自分のクラスが何をするかはまだ決まっていません」
俺がそう言うと先輩はスマホをカバンからスマホを取り出しメモしだした。おそらく文化祭の日に予定が空いているかを確認しているのだろう。
「おっ、10日は、バイトないから行けるよ。9日は、学校あるから無理だね。けど、文化祭かぁ~。ちなみに悠斗くんは何してみたい?」
「大変なことじゃなければ何でも」
やりたいことは特にないが年に一度のイベントでもあるし、やっていて楽しいことが出来ればいいなと思っている。お化け屋敷や屋台系をやったら楽しそうだなとは思う。
「じゃあ、みんなが決めたやつをやるみたいな感じだね? 私は、メイドカフェとかやってみたかったな。男子とかご褒美なんじゃない?」
「えっ、いや、別に……」
「そんなこと言って、美奈ちゃんとかがメイド服着てるところ想像してみてよ。いつも女子には興味ありません感出してる朝井くんでも絶対、釘付けになるよ」
「そうですかね……」
少し想像してみようとしたが、今ここで想像してニヤケ顔を先輩に見られてしまったらと思うとやっぱりやめておこうと思った。
「あっ、美奈ちゃん、バイトどうなったって?この前、バイトで美奈ちゃんがバイト探してるって言ってたじゃん」
「駅前の本屋でバイトすることになったみたいです」
「お~、本屋! 今度こっそり会いに行こうかな。そう言えば美奈ちゃん、うちらがバイトしてるカフェ来ないね。もしかして朝井くん、来るなって言ったの?」
「言ってませんよ」
おそらく来ようとしているがテストがあったり、夏休みは遊んだり、課題をやったりと忙しいから来れないだけだと思う。
「さて、1時間以上ここで喋ったしそろそろ帰ろっか」
喫茶店を出ると外はもう暗かった。気付けば7時、念のため家を出る前に香帆さんに今日は帰りが遅くなりますと伝えておいて良かった。美奈さんに今から駅に寄ってから帰るとメッセージを送ると美奈さんから『じゃあ、迎えに行く』とメッセージが来た。
喫茶店から少し歩き、駅前に着くと改札前で立ち止まる。
「じゃ、次会うのは来週の水曜日だね」
「そうですね」
そう言うと白井先輩は、何か言いたそうで言い出せない雰囲気でいた。
「先輩、どうかしましたか?」
そう尋ねても先輩は、黙ったままで何も言わない。そんなに言い出したずらいことなのだろうか。
ふと、こないだ美奈さんが言ったいたことを思い出す。次、あたり告白かしら?とか言ってたよな?まさかこの流れ……美奈さんと言っていた通りになるんじゃ……。
そんなことを考えていると先輩が何かを決意したのか口を開いた。
「朝井くん」
「はい、何ですか?」
何を言われるかと思ったら名前を呼ばれたのでとりあえず返事をする。
「彼氏のフリをしてほしいの!!」
今の勢い……こ、告白されるかと思った……。
勘違いして心の中で一人恥ずかしい思いを……いや、ちょっと待てよ。今さっき、先輩に……。
今は勘違いして恥ずかしいとかなってる場合じゃない。今さっき白井先輩に彼氏のフリしてほしいって頼まれたのよな?
「今の何……?」
ちょうど迎えにきた美奈さんは、オレに声をかけようとしたが白井先輩の発言が聞こえてしまい足を止めた。
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