第3章 それぞれの決意、新たな関係
第34話 決意
どう答えたんだろう……もし、悠斗くんがうんと答えていたら白井先輩と……。いやいや、白井先輩は、付き合うフリをしてほしいって言ってたわけだし本当に付き合うわけじゃない。
それに悠斗くんが誰かと付き合うフリをしようと私には関係ないじゃない。今は、文化祭の準備に集中しなくちゃ。
そう、今日から文化祭の準備が始まった。
昨日は、始業式とホームルームがあり、その昨日のホームルームで文化祭はメイド喫茶店をやることに決まった。
メイド喫茶はどうしても女子がメインになってしまうから男子から反対の意見が来るかと思っていたがむしろ男子の方がやりたがっていた。メイド喫茶に決まった瞬間、皆、私の方を見てきた。
まぁ、当然、ニコニコとその時は笑って返したが一人になった瞬間いつもの癖で思ったことを口にしてしまいそうだった。私を見る視線が気持ちわ────いや、もうそういうことは言わないことにしたんだ。抑えよう。
まぁ、そんなことで今日から文化祭までは放課後こうして文化祭のための準備を行うことになった。私は、衣装係になり、メイドの服を作っていた。予算4万という決まりがあるので女子全員分はないそうなので10着だけ作り、後はカフェで出す食べ物などにお金をまわすそうだ。
「美奈、文化祭誰と回るか決まった?」
同じ衣装係である伊織は、手縫いしている私のところに来て聞いてきた。
「決まってないよ。伊織は、軽音があるから回れないんでしょ?」
「うん、ごめんね」
「謝らなくても……軽音、絶対、聞きに行くから」
「ありがと」
伊織はそう言って他の子のもとへ行った。
どうしようかな……。文化祭、誰と回るとかあんまり考えてなかった。一人で回るのも楽でいいけど、やっぱり……。
無意識に私は教室の出入り口にいる悠斗くんを見てしまった。すると、悠斗くんがこちらに気付き何かようと言いたげな目で見てきた。
私は、口パクで何にもないよと言って手を振った。振り返してくれると思ったが悠斗くんは、手を振り返すことなく教室を出ていった。
「えっ……」
えっ、私、もしかして嫌われた?
昨日も今日の朝も普通に話してたし、あっ、でも今日は一度も話してないや。えっ、もしかしてそれが原因?いやいや、喋りかけてくれないからすねて無視したとかそんなわけないでしょ。
しばらくして教室の出入り口から悠斗くんが入ってくるのが見えた。手に何かを持って、私のところに来た。そして私の頬に冷たい何かが当たった。
「冷たっ」
何が当たったのか見ると冷えていた缶ジュースだった。
「これで良かったか?」
「えっ?」
缶ジュースを渡され、私はよくわからずそれを受け取る。良かったって何が?
「さっき口パクで『飲み物買ってこい』って言ってきただろ?」
えっ……? 私が伝えたことと全く違うんだけど。
「言ってないよ。私は『何にもない』って言ってたの。私、そんなパシりみたいなこと言わないから」
悠斗くんの私のイメージって一体……。
スッと手元から先ほどもらった缶ジュースがなくなり、私がえっ?となり悠斗くんの方を見る。
「じゃあ、いらないんだな」
「ま、待って、いらないとは言ってないでしょ?」
私は缶ジュースを奪い返し、悠斗くんにまた取られないように背を向ける。
「はぁ……。まぁ、それは君にあげるよ。ところで美奈さんは、衣装係みたいだけど作業進んでる?見たところさっきからずっと手止まってるけど」
「やってますぅ~」
缶ジュースを机に置き、縫っていた途中の布を手に取り作業を再開する。
あれ?ちょっと待って……。先ほどの悠斗くんの発言を思い出す。悠斗くん、さっきからずっとって言ったよね?それって私のことを………。
「美奈さん?」
「えっ、あっ、何?」
「何ってオレ、何も言ってないんだけど。美奈さんがじっと見てくるから何かあるかと思って」
「別に何もないわよ。それより、悠斗くんは、文化祭誰と回るの?」
悠斗くんが誰と回るのかなんてどうでもいいはずなのに私は、彼に聞いた。
「誰って……友達とだけど。あっ、でも2日目は白井先輩が来るらしいからその時は先輩と回ろうかなと思ってる」
白井先輩と………。
白井先輩の彼氏のフリを引き受けたのか気になるが聞く勇気はなかった。
「そ、そうなんだ……」
私、今、どんな顔してるんだろう。ここ最近、自分の気持ちが整理できてなくてどうしたらいいかわからない時が多い。
「美奈さんは、誰と回るんだ?」
「私も友達と……って言いたいところなんだけど今のところ誰もいないかな。仲いい女子は委員会や部活で一緒に回れないから」
「そうか……。森や長谷部は?」
「森くんと長谷部くんは、二人で回るだろうし、男子2人と女子1人はさすがに……」
「ふ~ん、なら、オレと回るか?」
「えっ……?」
悠斗くんと回る?
まさか誘われるとは思ってなくて私は驚いた。
「まだ当番の時間決まってないけど1日目は、オレ、空いてるし、その日、一緒に回らないか?」
「いいの?」
「うん。美奈さんがオレといたくないなら別にいいけど」
「嫌じゃないわよ。一緒に回りましょ」
「わかった。じゃ、衣装作り頑張れよ」
悠斗くんは、私の肩にポンッと優しく叩き、男子が集まっているところに戻っていった。
悠斗くんと文化祭……か。
嬉しさのあまりニヤケそうになるが頬を叩いて衣装作りを再開した。
***
「ってことで俺は立川と回ることになったから」
俺は、一緒に回ろうとしていた片山にそう言った。
「おう、わかった。もしかして夏休み中になんかあって付き合い始めたか?」
「付き合ってない。立川が誰も回る人がいないって言ってたから誘っただけだ。片山含めて3人で回ってもいいがおそらく立川が嫌がるだろうし」
そう言うと片山が今日一大きい声を出した。
「嫌がる? 俺、立川に嫌われてるのか?」
「いや、そういうわけじゃない。ところで片山、少し相談があるんだがいいか?」
俺は、数日前にあることを決めた。
俺は、この文化祭で美奈さんに───。
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