第27話 これは事故

「で、さっきおやすみって言って別れたばかりだよな? 次は何の話だ?」


 先ほど美奈さんと別れたばかりなのだが、美奈さんは俺が寝る部屋にまた来た。そして彼女はなぜか枕を抱き締めていた。


 本当に何しに来たんだ……?


「ひ、一人だとやっぱり怖いし一緒に……」


「香帆さんと寝たらいいじゃないか? 俺となんかと寝たらいろいろと問題だろ。てか、一人で寝れないっていつも家では自分の部屋で寝てるじゃないか」


 俺がそう言うと美奈さんは、顔を真っ赤にしながら話し出した。


「だっ、だって……いつも寝てるところより広いし、それにもう高校生なのに怖くて一緒に寝たいなんてお母さんに言えるわけないでしょ……」


 俺には言えるのかよ……。

 別に香帆さんに怖くて一緒に寝たいって言っても香帆さんは笑ったりしないと思うが。


「わかった。一緒に寝てもいいけどもう自分の布団を持ってくることだな」


「う、うん! ありがとう」


 ニコニコしながら美奈さんは部屋から出ていく。


 数分後、美奈さんは布団を部屋に持ってきて俺の隣に布団を敷きだした。


「近すぎるだろ。もうちょっと離せ」


「はいはい、わかりましたよー」


 ムスッとした顔で美奈さんは布団を離す。だが、全く離れていない。


「まだ近い。美奈さんの近くで寝たら嫌な予感しかしない」


「嫌な予感って別に寝相悪くて足蹴りするとかするわけないでしょ」


 そうかな……。

 今のところ嫌な予感しかしないが……。


「これでいい?」


 少し離れたところに布団を敷いた美奈さんはこれでいいかと確認してきた。まぁ、これぐらいならいいだろう。


「じゃ、電気消すぞ」


「うん、おやすみ」


「あぁ、おやすみ」


 美奈さんが布団の中に入ったことを確認してから俺は、部屋の電気を消した。そして俺も布団の中に入った。


 さて、移動で疲れたし寝るか……







***







 ん? なんだ?


 寝ていた俺だが何かがおかしい気がして目を覚ました。


 えっ……?

 横を見るとどうしたらいいかわからない状態になっていた。俺の腕に離れたところで寝ていたはずの美奈さんが抱きついていた。腕が枕とでも思っているのだろうか。腕に抱きつかれてるせいか腕に胸が当たってる。そして一番問題なのが美奈さんが俺の布団の中に入ってきていることだ。


 動こうにも動けないこの状況を打破するにはどうするのが正解なんだろうか。


 てか、美奈さん寝相悪すぎだろ。足蹴りはしてきてないがこのままこの状況でいればどんな被害を受けるかわからない。


 こういう事故は喜ぶところなのだろうか。偏見だが美少女がこんなにも近くにいてそれも胸が……いやいや何考えてるんだよ俺は!


 仰向けに寝る俺は、こちらを向いて寝る美奈さんをチラッと見てどうするべきか考えた。無理矢理にでも元の場所へ戻すのがいいが……。


 今、右腕が動かせる状態ではないため肩を叩いて起こすことは出来ない。なら、声をかけよう。


「美奈さん……美奈さん」


 少し大きな声で名前を呼んだが美奈さんが起きる気配はしない。


 はぁ~、こんなことになるなら部屋に入れなゃよかった……。あの時美奈さんが本当に怖がりであることに気付いたから俺はあの時一緒に寝てもいいと答えた。


「美奈さん、起きて……」


 何度も声をかけるが目を覚ます様子はなし。ここはもう無になって寝ることにしよう。


***


 次目が覚めると障子から太陽の光が差し込んでいた。右腕を動かせたので昨日あったことは夢だと思い、ゆっくりと起き上がると隣には美奈さんが気持ち良さそうに寝ていた。


 蹴ったのか布団からは出ており風邪引きそうだ。ふと美奈さんの綺麗な足を見てしまい慌てて目をそらす。するとガサッと音がして音がした方を見ると美奈さんがゆっくりと起き上がっていた。


「ん~、ここは……」


 寝ぼけているのか美奈さんは、眠たそうな顔をして辺りを見回す。そして俺と目があった。


「なんで悠斗くんがここに……あっ、確か一緒に寝て……」


 一緒に寝るといったら誤解を与えそうな言い方になると思うが。


 だんだんた意識がハッキリしてきたのか美奈さんは自分がオレの布団の上にいることに気付く。


「えっ、ちょっと待って……悠斗くん、まさかっ────」


「いやっ、違うから!! 美奈さんが勝手にオレの布団に入ってきただよ!」


 誤解させると大問題になるので俺は慌てて本当のことを言う。


「ホントに? やらしいことしてないよね?」


 美奈さんは、自分の服を見て俺に尋ねてくる。


「どちらかというと美奈さんの行動に問題があったよ。布団に入り込んできたり、腕抱き締めたりしてきたのは美奈さんだ」


「えっ、私、そんなことした覚えないんだけど」


 美奈さんが無意識でやったことは俺もわかってる。これは、どちらが悪いとかない気がする。これは事故だ。


「まぁ、寝ぼけてそういうことをしたってことだろう。言っとくけど俺は何もしてないからな?」


「ホントにぃ~?? 寝てるから気付かないだろうとか思って何かしそうだけど。まっ、悠斗くんはそんなことしなさそうだけど」


「あぁ、しないよ。どちらかというとポッキーゲームしようとした時に『好きにしていいよ』とか言ってくる美奈さんの方が何かしそうで怖いよ」


「あれは……忘れてなさい。私はそんな変なことしないから」


 美奈さんはそう言って部屋から出ていき大きな荷物を持ってきた。そして何をするのかと思いきや目の前で服を脱ぎ出した。


 いやいや、さっきしないって言ったよな!?






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