第5話 2人だけのルール

 荷物も片付き、夕食を4人で食べた後、俺は、いつものように自分の部屋へと戻っていく。


 自分の部屋がある2階へ行くため階段を上りながら頭の中で寝るまでどうしようかと考えていると後ろから誰かに服を引っ張られた。


「悠斗くん、ちょっといい?」


「ん? どうした?」


 後ろは振り返らず階段を上がる。その後を美奈さんは続いて上ってくる。2階へ着きオレは、振り返った。


 こ、これはヤバい……。


 目の前にいる美奈さんの見慣れない格好に俺は、目が離せないでいた。


 どうやらお風呂上がりのようで濡れた髪に可愛らしいパジャマ、そして眼鏡をかけていた。これを見てドキッとしない男子はおそらくいないはずだ。直視できないぐらい可愛いと思う。


 家では眼鏡かけるんだな。家に一緒に住むことで学校では知れないことをしることが出来た気がする。


 シャンプーの匂いかわからないが何かいい匂いがするような……。


 しばらく無言になって美奈さんを見ていると美奈さんがニヤニヤしながらこちらの顔を覗き込んできた。


「あっ、もしかして見とれちゃった?」


 落ち着け……。

 これは、好きじゃない奴でも同じ反応をしてしまうものだ。


「んなわけないだろ」


 感情をすべて無にして答えると、ほしかった反応と違ったので美奈さんは、ムスッとした顔をする。


「良かったよ。こんなことで好きなられたら困るしね。それより悠斗くん、私に提案があるのよ」


 提案……嫌な予感しかしないのは俺だけだろうか。


「嫌な予感しかしないけど一応聞いておく」


「それ、心の中で言ってもらえる?」


「わかった、次からは我慢するよ。で、君がいうその提案は?」


 俺がそう聞くと美奈さんは、両手を腰に当ててこちらを見てきた。


「私達が家族でいるために私達2人のルールを作りたいんだけど……どう?」


 ルール? 一体どんなルールを作るのか全くわからないんだが………。


「ルールって例えば?」


「そうね……例えば私の秘密は家族にも知人にも誰にも言わないこと。後は、私達が家族であることは秘密。あと、前にも言った通り家族に恋愛感情を持たないこと。それから──」


「おい、ちょっと待て。家族であることを秘密にするのは別に構わないんだが美奈さんが仮面被っていることは別にルールにしなくてもいいだろ。バラされても困るの美奈さんだけだし」


「それはそうだけど、もし、バレて私が学校でのけ者扱いされることになるとします。そしたら当然家族が心配するでしょ? で、家族があぁ、私達が再婚なんてしたせいで美奈が……なんてことになったら家庭崩壊の危機じゃない。だからルールにするべきなの」


 被害妄想凄いな……途中から聞きたくなくて後半の方の内容は全く聞いてない。


「まぁ、美奈さんがそうしたいなら勝手にどうぞ」


「美奈さんは、さっき3つルールを言ったよね?

なら、俺から3つルールを追加させてもらう。俺と美奈さんだけのルールなんだから当然俺にも追加する権利はあるよな?」


「え、えぇ、権利はあるわね。で、悠斗くんは、どんなルールがほしいの?」


 このルールは、家族であるために必要なこと。

 なら───


「部屋に入る時はノック。お風呂に入る時は絶対に鍵な。で、最後だが、困ったらお互い助け合うこと」


「助け合う……?」


「家族になったんだ。困ったことを一人で抱え込まれると後で面倒なことになる。言いたいことは口にする……まぁ、さすがに女子だけがわかることを相談されても困るけど」


 俺は、そう言って話を続ける。


「美奈さんがどういう人かまだわからないけど君が悩みとかを溜め込みやすい人だってことは知ってるから」


 外のキャラを作る美奈さんは、嫌なことがあったら何事もなくニコニコと笑い溜め込んでしまう。俺が本当の美奈さんを知ったときだってそうだ。悩みを溜め込みすぎて吐き出すところがないから誰もいないところで思ったことを口にしていた。


「悠斗くんって、私のこと興味ないかと思ったけど、案外見てくれていたのね……」


 少し嬉しそうな笑みを浮かべる美奈さんに俺は、小さく頷いた。


「君とあの場で出会ってなくても俺は、君がどういう人であるかはわかっていたよ。偽りの優等生さん」


「なっ、私、みんなの前では猫被ってるけど成績がいいのは本当だから」


「はいはい、わかってるよ」


「決めたからにはルール守ってよね?」


「あぁ、もちろんだ」


 頬を膨らます彼女に背を向け俺は自分の部屋へと入った。








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