第4話 家族であることは誰にも言わないこと
お互い言いたいことがあり、俺と立川は、レストランの外に一度出た。
「嫌な偶然ね……」
「あぁ、そうだな……」
まさか立川が再婚相手の娘さんだなんて誰が予想できたか……。
父さんと香帆さんはというとレストランに来てから1時間経過しているがまだ楽しそうに話している。
「俺は、再婚には賛成だ。立川は?」
立川と家族になってもオレの生活に支障はない。だが、立川は俺に弱みを握られているため一緒に暮らすのは嫌だろう。
「賛成よ。お母さん、お父さんが亡くなってから元気なくて……けど、あなたのお父さんと出会ってまた前みたいに笑ってくれるようになったの。だから、私のわがままで反対はできないわ」
「そうか。なら、意見は同じだ。ところで君の誕生日はいつ?」
「誕生日? 誕生日は──って、誕生日なんか知ってどうすんのよ。まさかまた弱みでも──」
なんでそうなるんだよ。てか、誕生日知って
「君がオレの妹か姉か……それが知りたいだけだ」
「妹か姉……な、なーんだ、それならそうと早く言いなさいよ」
いや、立川が勝手に被害妄想し始めたんだろ。
「で、いつ?」
「12月24日……クリスマスイブよ」
「なら、オレは兄だな」
「なっ、朝井くんの誕生日いつ?」
立川は、オレの方が誕生日が先であることが信じられないのか肩をガシッと掴み聞いてくる。
「7月14日」
「へ、へぇ~、じゃあ、私が妹ってことね……」
出来れば姉が良かったなみたいな顔してるな。
「ねぇ、家族になるなら一つあなたにお願いしたいことがあるんだけど」
お願いねぇ……嫌な予感しかしないが、まぁ、聞くだけ聞こう。
「お願いってなんだ?」
「私のこと好きにならないでほしいの」
「はぁ……なんだよそのお願い」
「家族になるなら重要なこと。私達は、家族……家族に対しての恋愛感情は不要ってことを先に言っておかないと後になったら言い出しずらいじゃない」
確かにこれから同じところで何事もなく暮らすには家族である立川に恋愛感情を抱くのはやめておいたほうがいい。
この新しい生活を守るためにも……。
「私のこと好きにならないでね?」
念を押すように立川は、作り笑顔でオレに言ってくる。
オレが立川をねぇ……。
「なるわけねぇーだろ」
「そうハッキリ言ってくれるなら安心したわ。後もう一つ言っておくけど私達が家族になったことは誰にも言わないこと……いい?」
「あぁ、わかった……」
俺と立川は、ただのクラスメイト。それは今もこれからも変わらないはずだ……。
***
1週間後、俺が住むの家に立川家の2人は、引っ越してきた。
家は、2階建てで空き部屋はいくつかある。立川は、俺の部屋の隣が空いていたためそこを使うことになった。
席が隣同士なのはまだいいが部屋が隣って。嫌とは言わないがやはり同級生と暮らすことに抵抗はあった。
「立川、荷物全部運べたか?」
1階から2階へ物が入った段ボール箱を上げるのを手伝ったオレは、これから立川の部屋になる部屋の入り口前で中にいる立川に聞く。
「えぇ、運べたわ。ところで、立川って呼ぶとお母さんも反応しちゃうから家にいる時は、下の名前で呼んでよ。私も朝井くんのこと悠斗くんって呼ぶから」
確かにそうだな。立川と呼んでしまうと混乱してしまう。
「わかった。じゃあ、美奈さん」
オレがそう言うと彼女はムスッと頬を膨らませる。
「へぇ~、さん付けなんだ」
「じゃあ、ちゃん付け?」
「それはキモい」
「やっぱり文句を言われようと立川のことは美奈さんと呼ぶことにするよ。オレとは呼び捨てにするほどの仲じゃないだろ?」
「それもそうね」
「これからよろしく、美奈さん」
俺は、美奈さんの前に手を差し出す。そして美奈さんは、その手を握り返した。
「こちらこそよろしくね。悠斗くん」
一緒に暮らすことになっても美奈さんとの関係は変わらないし、生活はこれまでと同じだ。
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