第10話 部屋に入る時は必ずノックすること
「ただいまー」
学校から家に帰ってきた俺だが、家の中は、シーンと静まり返っており、誰の靴もないことから家の中には誰もいないことがわかった。
美奈さんは、友達と用があるから今日は帰りが遅いと昨夜夕食の時に言っていた。香帆さんは、おそらく買い物だろう。
靴を脱ぎ、自分の部屋にカバンを置くため、2階へ上がった。カバンを置いた後は、また下へ降りる。
洗面所へ向かうおうとしていたところ窓から外を見ると雨が降っていた。
「ん? 雨……って、洗濯物!」
外に洗濯物が干してあるのを見て俺は、慌てて洗面所があるドアを開けて入ってからすぐ横にあるカゴを取って外にあるスリッパを履いて外へ出た。
「濡れてる」
急いでカゴへ干してあるものを入れていく。するとあることに気付く。こ、これ、美奈さんのやつだよね……?
手が止まり俺は、どうしようかと考える。俺が触っていいものなのだろうか。取るのに抵抗があるが今はそんなこと言ってられないよな?
この場にいればいるほど自分自身が濡れていくし、洗濯も濡れる。
よし、ここは、思いきって……
目を閉じて俺は、それをバッと取ってカゴヘ入れた。そして、まだ干されているものを次々に入れていく。
途中、俺と父さん以外のものもあったが、今は、取り入れることが最優先だ。
カゴにすべて入れ終わり、カゴを持って急いで家の中に入った。
「はぁ~、いろんな意味で疲れた」
とりあえず洗面所へこれを持っていくか。帰ってきてから1階の電気は付けた覚えはないがなぜか付いていた。
あれ? さっき慌てていた時につけたっけ?
洗面所の前まで着き、ドアを開けるため一度カゴを下に置いた。するとあることに気付く。洗面所のところも電気を付けた覚えはないのに下から明かりが漏れていた。そしてドアが閉まっていた。
先ほど来たときに電気を付けたのかと思ったオレは、ドアノブに手を置き、ドアを開けた。
「なっ……」
「えっ……」
誰もいないと思っていた俺は、目の前に美奈さんがいて硬直する。美奈さんがいた……それだけなら良かった。だが、今、目の前にいる美奈さんの格好は俺が見てはならない姿だった。
雨が降ってきて慌てて帰ってきたといったところだろうか。カッターシャツが濡れてびしょびしょだった。そして下着が透けていた。
「おっ、お帰り、美奈さん……」
どうしたらいいかわからず俺は、この前決めたルール通りお帰りと言う。まぁ、当然だがこんな状況で言われてもただいまとは言わないだろう。美奈さんは、体が震えており顔が真っ赤だった。
そして美奈さんは、黙ってズンズンとドアの前に立つ俺のところへ向かってきて無言でドアを閉めた。
「……ごめん、美奈さん」
ドアを挟んで俺は、ドアの向こう側にいる美奈さんに謝る。すると、小さな声が聞こえてきた。
「──た?」
「えっ……? 美奈さん、何か──」
聞き直そうとすると次は先ほどより少し大きな声が聞こえてきた。
「見たかって聞いてるの……」
「見たってそれはその……」
「正直に言ったらルール破ったこと見逃してあげる。悠斗くん、部屋に入る時は必ずノック……まさか忘れたの?」
忘れてはない……今回の場合、先ほどまで人がいなかったところに数分後人がいたのだからしょうがないだろ。と言ってもおそらく言い訳にしか聞こえないだろう。
「透けていたので、その……し、下着を見てしまいました」
素直に答えたがしばらくあちらから返事が返ってこない。もしかしてこれ、怒られるパターンか? すると美奈さんの声が聞こえてきた。
「素直でよろしい。事故ってことでさっきあったことはなかったことにするよ。悠斗くんも見たくて見たわけじゃないでしょ? たまたま目がいっただけ……そうだよね?」
「あぁ、もちろん」
「なら、よし」
俺は、ホットしたのか肩の力が抜けた。さて、このカゴ、どうしようか。美奈さんが出てくるまで待とうと考えていると洗面所の方からバサッと音がした。
や、ヤバいっ!
俺、ここにいてはならないのでは!?
俺は、カゴを置いてここを離れようとしたその時、ドアの向こう側から美奈さんの声が聞こえた。
「ゆ、悠斗くん……もしかしてまだそこにいる?」
えっーと、これは、うん、いるよと言ったら怒られるやつだよな?
何も言わず俺は、ゆっくりこの場を立ち去ろうとしたが、カゴに足が当たってしまい、ガタッと音がなった。
あっ、これ終わったな……。
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