23.スネイア先生と協力関係に



 はっ……! また気絶していた……!


「あひぃ~♡ はひぃ~……♡」


 ベッドの上には見るも無惨な姿の、黒髪の女教師が……!


「やっちまった……! 俺またやっちまったよぉ……!」


 魔力の暴走により俺はまた女と魔力移ししてしまったようだ……!


 くそっ……! なんてことだ……!


 どうして俺の下半身だけは原作に忠実なんだよ……!


「あうぅん……♡ ふぅん……♡」


 先生の体中から汁という汁がでてて、体中にはアレまみれになっていた。


 やべえよ完全に事後だよ……。


 ってか、ん?


「なんか先生、見た目変わってね……?」


 やる前とあとで、外見に変化が見られた。


 原作でのスネイア先生は、ワカメヘアで、目に隈があり、ガリガリで、鷲鼻、そして実に不健康そうだった。


 しかし今はどうだろう。

 肌はつやつや。目はぱっちり二重(白目むいて気絶してるけど)。


 豊満な体つきにスッ……と鼻筋が通った、まあバランスの良い美女になっていた。


「ど、どうなってらっしゃるのん……?」


『ぬしの力じゃろうな』


 視界に全裸の幼女、大賢者の赤石の意思、ミルツが映る。


「お、俺? またなにかやっちゃったっけ?」


『うむ。性行為を通して、膨大な量の魔力があの女に流し込まれた。それは細胞を活性化させ、またホルモン分泌を促し、あのように外見を変化させたのである』


「つまり……俺とやった結果、魔力が言い影響を及ぼして、先生が美人になったってこと?」


『そーゆーことじゃな。ぬしはすごいのぉ! やれば女をパワーアップどころか、見た目もグレードアップするなんてな!』


 ああ原作にない設定が次から次へと開示されていく……!


 先生、そして原作者カミマツ様すみません……。


「って、ハーマイアは?」


 地面で眠っていた。

 ケツを突き出したような状態で、手足を縛られ、目隠ししていた。


「何があったの!?」


 どう考えても変態プレイです本当にありがとうございました。


 はぁ~……。


「魔力移し、やっぱりもっと定期的にやらないといかんなこれは……」


 魔力の暴走が起きると自分を制御できなくなる。


 そうなると何をしでかすかわからない。


「暴走してもやるし、暴走しないためにもやらないといけないなんて……とんだエロ設定だろ」


 絶対作者は性欲溜まってるんだろうな。

 たしか原作者のカミマツ先生って高校生だった気がする……。


 まあ高校生だしな、エロに興味があっても仕方ないだろう。


「さて……と」


 気を失った状態で体をけいれんさせるスネイア先生。


「おい」

「あひっ♡」


 黒髪グラマラスな美人となったスネイア先生に質問をする。


 元々はそのためにやったんだよな……。


「質問に答えてくれ」


 原作でのハリスとスネイアの関係が、今も同じかどうかをまず確かめたい。


「あんたはハリスの味方……なんだよな? ガンダルヴ陣営で間違いないな?」


「ひぃん♡」


「どっちやねん……」


 原作でのスネイアは、闇の陣営のスパイをしていた。


 ガンダルヴの命令で、闇の陣営に接触。


 そして闇側に取り入って、でガンダルヴのスパイ、のふりをし、闇側の潜入捜査をしていたのだ。


「二重スパイ、ってことだよな」

「ひんひん……♡」


 それ肯定なの否定なの……?


 ま、まあいい。


 原作と同じく、スネイアが味方サイドだってことは確認できた。


「あんたが味方につく理由って、ハリスの母親が絡んでるんだろ?」


 原作だとスネイアとハリスの母は幼なじみだった。


 昔から陰気でいじめられていたスネイアのことを、ハリスがかばってくれたり、優しくしてくれた。


 そんな彼女が好きで、彼女のことを愛しており、その息子であるハリスを陰ながら守っていた……。


 以上がスネイアの設定だ。ちょっと百合入ってるけど、いい話だなぁと思っていた。


 まあ、そんな先生をやってしまったのだが……。


「現状は理解できた。次に、あんた何がしたかったんだ? ハリスの追跡なんてして」


「……わがはいは、呪いを解く方法を探っていた」


 ひんひん状態から少しは回復したようだ。


 倒れ臥したままスネイアが言う。


「呪いを解く?」

「……今のハリスはノアールに闇の呪いをかけられ、精神を汚染されている」


「ノアールに操られてるってことか?」

しかり。わがはいは彼奴ノアールに気づかれぬよう、その呪いを解く方法を研究している」


 追跡していたのは呪いの分析をしていたそうだ。


「それだけ?」

「…………」


 また口を閉じてしまった。

 呪いの分析をするためにわざわざ後を追うだろうか。毎回。


「えい」


 俺は先生の脇腹をつつく。


「ひんひぃん♡」


 先生が甘い声をあげて体をよじる。


 ここが性感帯なんだよな。

 ……って! なんでスネイア先生の性感帯を知ってるんだよ俺ぇ……!


 いや、そうか。暴走状態のときの記憶はなくとも、覚えているのか、体が!


 くっそいらん情報を得てしまった……。


「で? なんでハリスのあとつけてたの?」


 つんつん。


「ひんひん♡ ……それ、は。心配だったからだ」


「ハリスのことが?」


「ああ……。禁断の森には数多くのモンスターが闊歩している。あの子一人を出歩かせるのは、危険だ」


 ……だからあとをつけて、危なくないよう、見張っていたとのこと。


「マジで好きなんだな、ハリスのこと」

「……断じて違う。わがはいが心から愛してるのは、リリアただ一人だった」


 リリアからハリスのことを頼まれている、というのが原作の設定だった。


 なるほど、先生はどうやらそうとう、リリアのことを愛してるようだ。


 ……ん?


「だった、ってのはどういうこと?」

「~~~~~~~~~~~~! ばか! 死ね! くたばれ!」


 顔を真っ赤にして叫ぶスネイア先生。


 つんつん。


「ひんひぃいん……♡」


 びくんびくんと悶える先生。

 性感帯つつくの結構便利だな……。


「まあ……あんたの状況と、何をしてたのかは理解したよ。で、結局呪いの解除方法って見つかったのか?」


「方法自体はな。だが……問題が2つある」


「問題?」


「ああ。呪いを解くためには特別な魔法薬がいる。それを作るための材料を集めねばならぬ」


 それが問題の一つか。


「もう一つは?」

「ハリスにどう薬を飲ませるか、だ」


「普通に飲ませれば?」


「莫迦か? ひんひんひぃいいいいいん……♡ あ、あひ……♡ わ、わがはいは……闇の陣営の仲間となっているのだぞ? 親玉であるノアールの邪魔をすると言うことは、ガンダルヴのスパイだったと公言するような物」


 先生の腰をつつきながら確かに、とうなずく。


 先生は潜入捜査中の身だから、勝手に動けない訳か。


「学園長に相談するのは?」

「無理だ。ガンダルヴが動けばさすがにバレる」


「つまり……ガンダルヴに今回の件を手伝わせるわけにはいかない。でも自分はスパイの身だから自分でも動けないと」


「ああ。八方塞がりなのだ。仮に魔法薬が作れてもな」


 先生はハリスを案じて呪いを解く薬を作ろうとしている。

 

 だが人手が足りないわけだ。


 味方側からは忌み嫌われ、敵側を頼るわけにもいかない。


「そうまでして、あいつを助けたいのか?」


「……ああ」


 ハリスの母を、ホントに愛してるんだなこの人……。


 さて。


 事情を知ってしまった俺は、これからどうするべきか考えなくちゃいけない。


 主人公ハリスが現在、ノアールの精神汚染を食らって闇落ちしている状況を、黙って見過ごすか否か。


 ……まあ、普通に考えて、見過ごすことなんてできないだろう。


 原作ではノアールに支配された男性教諭を、ハリスが助けるという展開だった。


 だが今ハリスが闇に支配されている。

 ならば今は他のやつがそこの役割を果たす必要がある。


「なあ……ふと思ったんだが、ハリスって何で闇にとらわれてるんだ?」


 するとスネイアがハァ……と息をつく。


「貴様のせいだろうが」

「え、俺……?」


「ああ。あいつの思い人、アリアドネを寝取ったのが貴様だろう。そのせいで心に穴ができて、そこをノアールにつけ込まれたのだ」


 そ、そうか……そうだったな……。


 つまりは、俺のせいでノアールに支配される羽目となったわけだ。


 ならば、なおのこと、助ける理由になるな。俺のせいなわけだし。


「てゆーか、なんであんたそれ知ってるの?」

「それはスト……」


「スト?」

「んんっ! き、きさまにゃかんけぇにゃい!」


 かみかみだった……まあなんらかの手段で知ったんだろう。


「まあとにかく、よし……スネイア先生」

「なんだ?」


「俺も、手伝うよ。ハリスの呪いを解くの」


 ものすごい不審そうな目を向けられる。


「や、ほら、俺のせいでもあるし」


 彼女はしばし考えて、ふん、と鼻を鳴らす。


「まあ貴様ごときでもパシリくらいはあっあっあっあっあーーーーん♡」


 かくして俺はスネイア先生と協力することになった。

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